電気自動車の波は商用車にも起きています。
海外には多くのEVベンチャー企業が存在し、大口顧客とコラボレーションするなどし研究開発を行っています。
目次
量産へ向け機能向上
アライバル社はイギリスのオックスフォードシャーに拠点を置く、商用車に特化した電気自動車のベンチャー企業です。
既にアメリカの貨物運送会社 UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)から10,000台の受注とその投資を受けており、「アルファ」プロトタイプの公開をしていましたが、より実用的な第2世代へと進化させました。
第1世代のプロトタイプに比べ、より従来のバン形状に近いものになっています。運転席はスライドドアとし、開けたまま走行できるようにドアがボディの外側へ膨らまない構造になっているのが特徴です。
ARRIVAL社はこのEVバンについて2022年第1四半期の販売を目指しています。バッテリーサイズを変えることで44kWhから最大130kWhまで対応可能としています。航続距離についての詳細は現時点で不明ですが、1回の充電でおよそ100マイル(160km)程度と考えられます。
商用車としての航続距離
ちなみに三菱ふそう・eキャンターの駆動用バッテリーは13.5kWhの高性能リチウムイオンバッテリーを6個搭載し、合計81kWh。1回の充電で約100kmの走行を可能としています。
日産・e-NV200の場合、40kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は約300kmを可能としています。
三菱・ミニキャブMiEVバンの場合、16kWhのバッテリーを搭載したモデルでは航続距離が約150kmです。
バッテリーサイズは航続距離に関係しますが、車両重量によっても大きく変わってきます。44kWhのバッテリーパックというのは大型の配送車には小さすぎるように思いますが、多くの配送車はごく限られたルートを走行するのみです。
例えばニューヨークでは1台の配送車が日々の配送ルートを走るのに、わずか15~20マイル(24~32km)しか走行しません。三菱自動車が実施した全国のドライバーアンケート調査によると、軽キャブバンが1日に走行する平均距離は77%の方が65km以下でした。
配送車やバスといった商用車は、決まったルートしか走行しないためEV化しやすいとされています。ルートや走行状態に応じて適切なバッテリーサイズのEV車に置き換えればそれだけコスト削減にも繋がります。
導入事例
日本国内でも電気バスの導入事例が増えており、2020年3月には富士急バスが中国の自動車メーカー「BYD」製の大型電気バス「K9」を3台導入しています。乗車定員56名と電気バスのなかでは多いのですが、従来のディーゼルバスに比べて3割ほど少ないのが欠点です。
これは乗客などを含めた車両総重量が20トン未満とする日本国内の基準において、重量のあるバッテリーを多く搭載する電気バスは定員が重量に左右されてしまうことが原因です。
また、日本郵便は2020年度末までに三菱のミニキャブ・MiEVバンを1200台配備する予定とし、2020年度末には東京都内における郵便物や荷物の配送に使用する軽四輪車の3割をEVとする計画です。
初期投資や車両本体の価格も、従来のエンジン車に比べ大きくアップします。しかしEVを賢く使えばトータルで経費の削減が可能となり、環境への取り組みとしてもアピールすることができます。個人向けの乗用車ではまだまだ普及に課題が残りますが、運送業者や公共交通機関ではさらなる普及が期待できそうです。
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