ポンテアック・アズテックといえば、「世界一醜い車」というのが世界共通の認識とされています。
しかし今改めてそのデザインを見てみると、現代のニーズにマッチしているのではないかと思います。細かく見てみましょう。
目次
ポンテアック・アズテックとは
ポンテアック・アズテックとは、アメリカの自動車メーカー GMが2001年から2005年に生産・販売していたミドルサイズクロスオーバーSUV。GMにとって初めてクロスオーバーSUVの市場に参入したモデルです。パワートレインはFFと4WDが用意され、V型6気筒エンジンに4速ATが組み合わされました。
中でもこの車を有名にしたのはデザインの醜さで、2007年に「タイム」誌で「史上最悪の車50台」で1位、2010年に「史上最悪の発明品50選」で1位に選ばれるなど、「史上最も醜い車」としての地位を現代におけるまで確たるものにしています。
しかし良く見るとそこまで悪くないのでは?と思う要素がいくつもあります。
クロスオーバーSUVである
アズテックが発売された当時はまだまだセダンやワゴンが主流で、SUVというとまだまだ大型の時代でした。それよりも小型でスポーティなクロスオーバーSUVは、現代において間違いなく売れ筋のモデルとなることでしょう。
当時の売れ筋は大型SUV
2段ヘッドライト
近年、ポジションランプとヘッドライトを上下に分割したようなデザインがトレンドとなっています。このアズテックにおいてもランプの役割こそ違うもののウインカーを上部に独立して配置しており、まさに現代のトレンドを先取りしているように思います。
当時は今以上に奇抜に感じた?
大型グリル
フロントデザインの厳つさを表すのに「オラオラ顔」という言葉が良く聞かれますが、上下に分割した大きなグリルを備えたアズテックはまさにそれが当てはまります。
かといってメッキなどは使われておらずそこまで派手さは感じません。むしろ自然な形状で落ち着いた雰囲気すら感じます。
ボンネットの形状に合わせてデザインされている
無塗装樹脂
現代のSUVにおいて多用されている無塗装樹脂パーツ。販売年にもよりますがアズテックはこの無塗装樹脂を車体の下部全体に採用しています。
かつてホンダ・エレメントでも採用されたこの手法は、車の道具感やタフさを演出するだけでなく、車体へのキズを目立たなくするといったSUVとしての機能性の向上にも一役買っています。
2000年代初頭の無塗装樹脂は「安っぽい」と思われがち
分割リアウインドウ
リアウインドウが上下に分割して配置されています。SUVに限ったデザインではありませんが、クーペ型のフォルムと後方視界の確保を両立した現代でも通用する先進的で理にかなったデザインです。
アウトドア要素満載
インテリアに目を向ければ、様々な機能が搭載されています。センターコンソールは取り外し可能なクーラーボックスとなっており、またオプションでは荷室がまるごと外へスライドできる機能やキャンピングパッケージとして車体に装着可能なテントとエアマットなどが用意されていました。
車中泊、キャンプブームの現代にこそふさわしいアクセサリーと言えます。
まとめ
このように、デザインやコンセプトにおかしなところはありません。多くの要素がSUVブームである現代でも通用するものであったと分かります。
生まれる時代を間違えたといえば簡単ですが、アズテックの開発は「ジェネレーションX」といわれるアクティブでライフスタイルに幸福感を感じている若者をターゲットにして行われました。そうした明確なターゲット層を設けていましたが、結果的にどの層にもウケませんでした。
ここでアズテックが販売中であった2003年のアメリカにおけるモデル別販売台数順位を見てみましょう。
順位 | 車名 |
車種
|
#1
|
Ford F-Series
|
ピックアップトラック
|
#2
|
Chevrolet Silverado
|
ピックアップトラック
|
#3
|
Dodge Ram
|
ピックアップトラック
|
#4
|
Toyota Camry
|
セダン
|
#5
|
Honda Accord
|
セダン/ワゴン
|
#6
|
Ford Explorer
|
SUV
|
#7
|
Ford Taurus
|
セダン/ワゴン
|
#8
|
Honda Civic
|
セダン/ハッチバック
|
#9
|
Chevrolet Impala
|
セダン/ワゴン
|
#10
|
Chevrolet TrailBlazer
|
SUV
|
#11
|
Toyota Corolla
|
セダン
|
#12
|
Chevrolet Cavalier
|
セダン/クーペ/コンバーチブル
|
#13
|
Dodge Caravan/Grand Caravan
|
ミニバン
|
#14
|
Ford Focus
|
ハッチバック
|
#15
|
Ford Ranger
|
ピックアップトラック
|
#16
|
Jeep Grand Cherokee
|
SUV
|
#17
|
Nissan Altima
|
セダン
|
#18
|
Chevrolet Tahoe
|
SUV
|
#19
|
GMC Sierra
|
SUV
|
#20
|
Ford Expedition
|
SUV
|
#21
|
Ford Escape
|
SUV
|
#22
|
Jeep Liberty
|
SUV
|
#23
|
Pontiac Grand Am
|
セダン/クーペ
|
#24
|
Toyota Tacoma
|
ピックアップトラック
|
#25
|
Honda Odyssey
|
ミニバン
|
#26
|
Honda CR-V
|
クロスオーバーSUV
|
#27
|
Ford Mustang
|
スポーツカー
|
#28
|
Chrysler Town & Country
|
ミニバン
|
#29
|
Chevrolet S10
|
ピックアップトラック
|
#30
|
Chevrolet Suburban
|
SUV
|
#31
|
GMC Envoy
|
SUV
|
#32
|
Pontiac Grand Prix
|
セダン/クーペ
|
#33
|
Chevrolet Malibu
|
セダン/ハッチバック
|
#34
|
Hyundai Elantra
|
セダン
|
#35
|
Toyota Highlander
|
SUV
|
#36
|
Dodge Neon
|
セダン
|
#37
|
Volkswagen Jetta
|
セダン
|
#38
|
Saturn Ion
|
セダン/クーペ
|
#39
|
Buick LeSabre
|
セダン
|
#40
|
Ford Windstar
|
ミニバン
|
出典:https://www.goodcarbadcar.net
残念ながらアズテックはランク外でした。販売台数ランキングからも分かるようにクロスオーバーSUVはほとんど存在しておらず、ほとんどが大型SUVでした。
唯一ランクインしたホンダ・CR-Vは、アズテックと比べてよりオーソドックスな外観デザインとなっています。やはりデザインが販売に大きな影響を与えたというのは間違いないようです。
2001 ホンダ・CR-V
しかし改めてアズテックを見てみると、そこまで悪くないのも事実です。最も醜い車と言われていますが、時代や流行りによってその価値観は変化するはずです。
当時は奇抜で醜かったとしても、クロスオーバーSUVに与えた付加価値、及びその先進性は称賛に値すると個人的には思います。
<関連記事>