航続距離が伸びたといえども、バッテリーの劣化に課題の残る電気自動車ですが、そのバッテリーを再生する工場が日産自動車主導のもとオープンしました。
EV化が進む自動車業界における新たなビジネスモデルとなるか、注目されています。
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EVバッテリー再製品化
日産自動車と住友商事が設立したバッテリーの2次利用を手掛けるフォーアールエナジー(4R社、横浜市)は3月26日、浪江事業所(福島県浪江町)の開所式を開いた。
4R社は電気自動車(EV)に搭載されたリチウムイオンバッテリーのリサイクルや再製品化を事業としており、新設の浪江事業所はバッテリーの回収や、性能分析、製品化などの業務を担う。製品は近く日産が発売予定で、世界で初めてというEV向け交換用再生バッテリーや大型の蓄電システムなど。工場の建屋面積は約2500平方メートルの規模で、約5億円を投資した。
当初の従業員は10人で、バッテリーの処理能力は旧型『リーフ』のもので年2250台分。2020年には同1万台規模を想定し、従業員も50人程度としたい考え。
浪江町は11年3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故で町内全域に避難指示が出され、その後17年3月末に「帰還困難区域」を除いて、避難指示は解除された。4R社の進出は、浪江町では震災後初の企業立地であり、復興への後押しになる。
開所式には出資会社のほか、吉野正芳復興大臣や馬場有浪江町長らも出席した。式典で日産の坂本秀行副社長は「EVで使ったバッテリーをここでよみがえらせ、2度も3度も使えるようにする。社会に対して非常に大きな貢献になる。ここでの仕事の仕方を世界が学んでいく時代が来るだろう」と、事業の意義とそれに対する期待を表明した。
また、4R社の牧野英治社長は「すべての自動車会社がEVを大量投入していくので、この事業は間違いなく拡大すると確信している。浪江事業所は再生品の製造だけでなく、再生技術のグローバルな開発拠点でもあり、このプロジェクトを通じ町の復興と発展に貢献していきたい」と語った。
開所式に合わせ、リーフの使用済みバッテリーを再利用し、ソーラー発電と組み合わせた外灯を設置する浪江町のプロジェクト、「THE REBORN LIGHT」で採用する外灯の試作機も公開された。
4R社は日産51%、住友商事49%の出資で10年に設立され、これまで家庭用蓄電システムの開発・生産や、大阪市や鹿児島県内の離島でのリユースバッテリーによる蓄電センターの実証実験などに取り組んできた。
価格は?
使用済みバッテリーを再利用することで、大幅に安い価格が実現されます。
今回提供が始まるのは24kWhタイプで、価格は30万円となっています。新品の場合だと65万円なので半額以下ということになります。性能はリチウムイオンバッテリー容量計で「12セグメント中10セグメント以上」が保証されるとのこと。
電気自動車を使用しているとこのセグメントが満タンにならない現象が起きます。これを「セグ欠け」とも言い、バッテリーの劣化を意味します。携帯電話などと同じですね。
リーフオーナーでは、一回目の車検時(新車から2~3年以内)には1セグメント欠けてる人が多いのだとか。
バッテリー交換or乗り変え?
もしあなたが旧型リーフのオーナーだとして、そろそろ航続距離に不満が出てきたとした場合、果たしてどちらを選びますか?
エンジン車であれば、燃費もさほど変わらずに壊れるまで乗り続けることができますが、バッテリーを丸ごと交換しなければやっていけないような車は車としてどうなのでしょうか?そこまでして乗り続けるメリットは果たしてあるのでしょうか。こればかりは環境やお財布事情というより「リーフが好きかどうか」によりますね。
フォルクスワーゲンやBMWの排ガス不正が立て続けに発生し、EV化がますます加速する一方で、テスラが過去最大の赤字を計上、自動運転での死亡事故など進むべき道が良く分からなくなってきた印象です。良く言えば「過渡期」ですので、いろいろな技術を選べる楽しい時代にいるのかもしれません。(前にもこんなこと書いた気が・・・)
結局は好きな車に乗って、その車を大事にするかどうかですね。
リーフが好きという人を笑うことはできませんし、その好きなリーフをより長く乗っていられる仕組みがオープンしたのであれば、これは喜ばしいことではないでしょうか。日産自動車は「NISMO ヘリテージ」という製造廃止になった部品を「NISMOヘリテージパーツ」として、再生産し日本国内で発売しています。このバッテリー再生に関しても、こういったベクトルでみると非常に頼もしいシステムと言えます。