自動車メーカーはラインナップする車種が多ければ多いほどその繁栄ぶりを象徴しますが、近年は競争が激化する中で多くのメーカーが車種整理を行っています。
一度生産をやめてしまうと再び生産することは至難の業であり、経営状況などを鑑みながら背水の陣で決断を下すわけです。そんな国内メーカー各社を代表する大決断をまとめてみました。
目次
ホンダ
軽トラック(2021年 完全撤退)
2009年に販売を開始した4代目アクティは2021年4月に生産を終了。これにより、アクティは約43年9ヶ月の歴史に幕を閉じ、ホンダは軽トラック市場から撤退することとなりました。
後継車となる軽トラックはなく、2022年現在ホンダの商用車はN-VANのみです。Nシリーズとして新たな軽トラックなどにも今後期待したいところです。
マツダ
ミニバン(2018年 完全撤退)
2010年に販売を開始した3代目プレマシーは2018年2月に生産を終了。これによりマツダはミニバン市場から完全撤退することとなりました。
SUVへのシフトとして撤退後は3列シートクロスオーバーSUVであるCX-8が間接的な受け皿となります。現在のマツダデザインをもつミニバンを見ることができないのは非常に残念です。
三菱
セダン(2016年 完全撤退)
2007年に販売を開始した第4世代ランサーエボリューションXは2016年4月に限定モデル「ランサーエボリューション ファイナルエディション」の販売を終了。これにより自社開発による日本国内及びごく一部の新興国を除く日本国外におけるセダン市場から完全撤退することとなりました。
同時に日本国内におけるMTの乗用車が皆無となりました。セダン市場は世界的にも縮小傾向にあり撤退は仕方のないことかもしれませんが、その代わりになるようなMT車を選択肢に入れてほしいものです。
日産
5ナンバーセダン(2016年 完全撤退)
2012年に販売を開始した初代ラティオは2016年12月に販売を終了。これにより日本国内向けの5ナンバー規格の小型ノッチバックセダンの取り扱いが事実上消滅する形となり、1966年4月に発売を開始した初代サニーの登場以来50年8か月の歴史に幕を降ろすこととなりました。
直接的な後継車種はないものの、小型ハッチバック車のノートが事実上の受け皿となります。日産はシーマやフーガといった大型セダンも2022年夏に生産終了となり、高級セダンからも完全撤退となります。
スバル
軽自動車(2012年 完全撤退)
1999年に販売を開始した6代目サンバーは2012年2月バン・トラックともに生産を終了。これにより、富士重工業(現スバル)の軽自動車生産は54年の歴史に幕を閉じ、スバルは軽自動車市場から撤退することとなりました。
メーカー間の開発競争が激化したことに加え、北米向けモデルに注力することが理由です。2022年現在販売されているスバルの軽自動車はダイハツからのOEMとなりました。かつてはスバル360という日本を代表する軽自動車を生産していたスバルも、すっかり軽自動車のイメージがなくなりました。
(番外編)スズキ
MotoGP(2022年 完全撤退)
スズキは1983年から参戦していた二輪車レースの最高峰「MotoGP」から2022年末にも撤退すると発表しました。レースを運営するスペインのドルナスポーツとの協議の結果、撤退が決定となりました。今後はレース参戦のための資金を電気自動車開発などに振り向けることになります。
2011年末にもリーマンショックや東日本大震災の影響でMotoGPの活動を一時休止していましたが、その後2015年に復帰していました。こうしたモータースポーツは技術革新のためにも必要な面はありますが、今後の市場を考慮してEVの開発を優先した形です。
撤退は撤回できない?
上記の例以外にも、撤退した分野は多く存在しますが、再び同じ分野に帰ってくることはほぼありません。経営的な選択ミスだということになってしまうからです。
しかし一度生産を終了したモデルを再販することはたまにあります。
トヨタ・シエンタの場合、2003年に発売された初代シエンタは2010年8月に販売終了となったものの、代替車種とされていたパッソセッテ(ダイハツ・ブーンルミナスのOEM)の売れ行きが著しく不振だったこともあり計画が変更。2011年5月に安全装備の追加などの法規制対応が施された上で生産・販売が再開されました。
また、トヨタ・ランドクルーザー70系は1984年から2004年まで販売されていましたが、2014年8月に”70″シリーズの発売30周年を記念して2015年6月までの期間限定で復活しています。日本国内で期間限定販売となった理由は、2015年7月26日以降の生産車両に適用される新保安基準に対応できないため。
一度やめてしまうとそう簡単に復活させることはできませんが、時代の流行り廃りに柔軟に対応することもまた必要なことです。今後セダンが人気となった場合、果たして各メーカーは新型のセダンを世に送り出すことになるのでしょうか。