自動車用内装でよく耳にする「アルカンターラ」。
ヨーロピアンな響きが高級感を醸し出していますが、一体どういう素材なのでしょうか。
目次
日本人発明
発明者である日本人科学者 岡本三宣氏は滋賀県出身、1936年5月18日生まれ。
1960年に東レ(当時の東洋レーヨン)に入社したのち、繊維研究所所長となります。1966年に超極細繊維をもちいたスエード調の合成皮革「エクセーヌEcsaine)」の開発に成功。1970年商品化を実現しました。
エクセーヌの開発は東レの最先端技術を集結して行われ、断面積比で髪の毛の400分の1という細さの原糸を用いて作られました。スエード調人造皮革のブランドとして日本ではエクセーヌ、アメリカではウルトラスエードというブランド名で展開。特にファッション業界にて注目を集めるようになります。
アルカンターラの誕生
エクセーヌが誕生した2年後の1972年。
イタリア最大の工業会社で半国有石油・ガス会社であるENIグループ(当時のANICグループ)と東レは、この特許の商業利用を目的としたジョイントベンチャーを立ち上げ、イタリアにANTOR S.p.Aを設立します。
エクセーヌを「アルカンターラ(Alcantara)」というブランド名に改め、製造・販売を開始。ファッション業界において普及、定着し始めます。「アルカンターラ」という名称は、アラビア語のAl Kantarをイタリア語風にアレンジした造語であり、日本とイタリア両国の友好の「架け橋」であると同時に、東洋と西洋の文化の「架け橋」でありたいという願いを込めて命名されました。
1973年には社名をANTOR S.p.A.から「IGANTO S.p.A.」に変更。これはItalia(イタリア)、Giappone(日本)、ANic、TORayの頭文字をとって命名されましたが、1981年には社名をIGANTO S.p.A.から「Alcantara S.p.A.」に変更します。
そして1984年、ランチア・テーマのシートやドアトリムにアルカンターラが用いられました。これを機に自動車業界での採用が広がっていきます。耐久性や耐光性・難燃性に優れ、通常の本革スウェードや合成皮革と比較しても手入れに手がかからないことから、維持に手間を必要とする本革にとって代わる高級素材として徐々に普及していきました。
ヨーロッパではアルカンターラブランドとして展開していましたが、自動車業界への進出においてこのネーミングでのブランドイメージが成功をおさめます。これにより2003年には自動車内装用が世界共通のアルカンターラ・ブランドに統一されます。
さらにアルカンターラ=イタリアというイメージによる効果が大きく、2013年には戦略を変更。アルカンターラをイタリア製に、ウルトラスエードを日本製に使い分けることになりました。
まとめ
つまり「エクセーヌ」が採用されている車は2013年以前の国産車となります。それ以降は日本製の場合は「ウルトラスエード」、イタリア製の場合は「アルカンターラ」として採用されていることになります。
エクセーヌ採用例
>三菱・デリカスターワゴン(スーパーエクシード)1986年
>日産・セフィーロ(A31型)1988年
>トヨタ・ランドクルーザー80(VXリミテッド)1989年
ウルトラスエード採用例
>ホンダ・ヴェゼル(RS)2016年
>スバル・エクシーガクロスオーバー7(YA系)2015年
>トヨタ・マークX(GRMN)2015年
アルカンターラ採用例
>三菱・エアトレック 2001年
>スバル・R1 2004年
>トヨタ・86(GT “Limited”) 2012年
アルカンターラは以外にもその歴史が長く、手軽に高級感を演出できることから今では多くの車種で採用される大人気素材となっています。以外にもルーツは日本ですが、現在では正真正銘のイタリア製となっています。それだけでなんだか高級感を感じますね。
自分の車に採用されている素材はどういったものなのか、一度調べてみてはいかがでしょうか。