2017年9月29日、日産自動車は会見を行い、新車出荷前に行う完成車検査工程の一部の項目で資格のない者が検査をしていたと発表しました。国土交通省による同社工場への立ち入り検査により判明しました。
本記事ではその内容を完成車検査工程の内容を踏まえてまとめていきたいと思います。
目次
問題発覚
「販売会社の在庫車の登録手続きを停止する決断をしました。これは国土交通省の立入調査があり、車両製造の最終である完成検査工程で一部不備があったことによるものです。」
広報担当・濱口貞行部長
完成検査は組み上がった完成車に対して、検査員が規定の検査をして完成検査終了証を発行することで、初めて販売会社に卸すことができます。ユーザーが新車を手にするのは、その後に運輸支局や検査登録事務所で新規登録をしてナンバーを付けた後となります。
完成検査は自動車会社が社内で研修を修了し認定された完成検査員が行わなければならず、「検査に必要な知識及び技能を有する者のうち、あらかじめ指名された者」と国交省が通達で定めています。しかし今回はこの検査員ではなく、補助検査員に検査を任せていたことが明らかになったのです。
9月18日、生産拠点の1つである日産車体湘南工場に立ち入った国交省職員の指摘で、日産が確認を行ったところ、追浜工場、栃木工場、日産自動車九州の同社3事業所と、日産車体、日産車体九州の関連会社で認定を受けていない補助検査員による検査が行われていました。
「検査自体は行っている。補助検査員も検査員として働いているし、安全性は問題ない。ただ、登録前の車両は(制度上)その確認ができていないということになるので、それを確かめて再出荷する。」
トータルカスタマーサティスファクション本部・杠直樹エキスパートリーダー
検査をやり直し、全てを正規の完成検査員で再検査することになったため、軽自動車を除くノートや電気自動車のリーフなど日産が国内販売する全ての車両全21車種、約6万台の登録を一時停止しました。販売店にある在庫車も再検査が終了するまで登録を一時とりやめることとなります。
影響は今後、すでにナンバーを取得して走っている日産車でも及ぶ可能性があり、2014年9月以降に新規登録を行った車両についても再検査を行う必要性が出てくるかもしれません。そうなるとリコールの対象が、100万台を超える可能性があります。
いつから適切でない検査を実施していたかは不明で、現在、同社が過去にさかのぼって完成検査票に残された検査員を確認中としています。日産は今後、第三者を含むチームで原因などを調査し原因究明をしていくとしています。
国交省は同社に対して10月末をめどに調査の結果や再発防止策などについて報告するように求めました。
完成車検査とは?
車体組立工程で車は完成しますが、工場にはそのあとにもうひとつ重要な工程が残されています。それが完成車検査です。
工場で製造された自動車は販売前、道路運送車両法に基づき、メーカーが指定した検査員がハンドルの利き方やライトの点灯状況など、安全面の基準を測定装置や目視でチェックする「完成検査」を行う必要があります。組立工程から出来上がった車は、この工程で1台ずつ丁寧に検査されます。それに合格して初めて出荷されることが許されています。
車は人の命を預かるものなので、検査は徹底的に行われる必要があります。以下がその基本的な検査内容です。(ホンダの完成検査を参照)
1、室内検査
組立工程の最後でガソリンを入れた車は、まず最初に室内から検査されます。シート、ラジオ、窓ガラス、ハンドル、ドアなど、隅々まで一つずつチェックします。
2、ヘッドライト検査
専用の検査機を使って光の焦点位置を細かく調整します。夜間の走行を確かなものにする大切な検査です。
3、走行検査
ローラーの上に車を乗せて走行させ、適切にスピードが出るか、ブレーキは効くか、スピードメーターは正確かなど、走行に関わる様々なチェックを行います。
4、シャワーテスト
集中豪雨より激しいシャワーのトンネルを通り、車内に水が入らないか水漏れのチェックを行います。
これらの厳密な検査を全て合格しなければ、その車は作り直しとなります。このような厳しい検査を行っているからこそ、日本の自動車の品質は世界一だと言われているのです。
今回問題となった日産自動車では、同社の各工場で社内の資格試験に合格した5人程度の社員がこの工程を担っていましたが、一部の社員が無資格で検査を行っていました。
まとめ
日産自動車の完成車検査工程の一部の項目で資格のない者が検査を行っていたため全21車種、約6万台の登録を一時停止。リコールの対象は100万台を超え、いつから適切でない検査を実施していたかは不明。国交省は日産自動車に対して10月末をめどに調査の結果や再発防止策を要請しました。
検査で不合格の車を合格としていたなら大問題ですが、今回はあくまで検査資格がないものが検査をしていたことが問題であり、車自体に悪影響はないとしています。
今回の問題ではこの完成検査工程が「自社の基準」に基づいた検査員により実行されていることが一因に思えます。何か特別な経験や勘が必要なら話は別ですが、チェックシートにマークするだけならば検査員でなくても「できてしまう」場合があり、今回のように補助検査員として一通り熟知していれば尚更ある程度できるはずです。つまり「合格はしているのだから、誰が見ても一緒」という考えになってしまってもおかしくはありません。
こういった「検査」ほど熟練の技やノウハウがあまり必要とされず、項目さえ押えておけば良いため、人員不足などの際に急遽人を配置させることはよくあることではないかと個人的には思います。
本来完成検査で一体どれだけの不良が出るのか分かりませんし、細かな検査内容は不明ですが、ブランドイメージの低下は免れません。「やっちゃえ日産」といキャッチコピーは、一歩間違えれば「やっちゃった」であり、会社が常に綱渡りをしているかのように感じます。
中途半端に社内資格を作っちゃったのかな?
そもそも、明確な資格制度が無かったら、誰かが[検査に必要な知識及び技能を有する者のうち、あらかじめ指名された者]と認めちゃえば・・・
社内資格は意外と曖昧で、自動車メーカーのみならず、多くの製造現場で問題があるはずです。
本来適切な講習が必要なところを事情により簡素化し、あたかも正式に講習を受けたかのようにしているのはよくある話です。
それが常態化しているのだとしたらそれは「躾」の問題で、結果的に会社・現場の「風土」となってしまいます。
この内容ならパートのおばちゃんがやったって問題なさそうだね
この件は安全性ってより企業としてのコンプライアンスとかガバナンスの問題かな
あと内部告発があった可能性が言われてるけど、この問題がでるちょっと前に日産リーフのスパイショットが日産工場内から流出した件と関連性があるんじゃないかと勘繰ってしまう。日産に処分された人が報復したんだったりしてw
ありましたね~。期間工の方がおもわず写真を撮ってツイッターに掲載したわけですが、これも結局は教育が行き届いて無かったのでしょう。
本来開発拠点だったりメーカーの機密に関わるような場所にはケータイを持ち込まないようになっていますが、やはり全員を検査することもできず、
個人のモラルに頼らざるを得ないのが現状ですね。内部告発されないような会社が理想ですね。
車が動くかどうかの検査でこんなに騒ぐのはわからない?
不都合があれば販売店でどうにかすればよいと思う。
エンジンが動き,ハンドルるが周り,ブレーキが利き,
照明がせいじょうなら問題はないと思うが!
基本的に製造工程ごとで品質は作り込まれているはずです。そのため最終検査で明らかな不良が発生することはないのが普通です。
せいぜい傷があるかどうかさえ見れば十分だと思いますが、「どうせ大丈夫だろう」という曖昧な考え方が常態化したとき、
こうした手順を簡略化あるいは省略し始めたのでしょう。しかし一般のユーザーからすれば「基準に沿っていない不正」という風に映りますので、
まずかったと言わざるを得ません。