自動車業界において、今年最大のビッグニュースが飛び込んできました。
日産のゴーン会長が金融商品取引法違反で逮捕されたのです。経営難だった日産自動車を立て直し、敏腕経営者としての地位をほしいままにする一方で、その超高額報酬や完成検査不正における対応にも一部から批判が集まっていました。
目次
金融商品取引法違反
日産自動車(本社・横浜市)のカルロス・ゴーン会長(64)の報酬を有価証券報告書に過少に記載した疑いがあるとして、東京地検特捜部は19日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いでゴーン会長を逮捕した。特捜部は同社の捜索も始めた。
これを受けて日産自動車は、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたなどとして、カルロス・ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役について、取締役会で解職を提案すると発表した。
出典:https://headlines.yahoo.co.jp
NHKニュースによると、内部通報を受けての調査が行われていたようです。
有価証券報告書とは?
有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)とは、金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料です。
金融商品取引法は、上場企業などに事業年度ごとの経理状況など、事業についての重要事項を記した有価証券報告書の提出を義務づけています。
虚偽記載するとどうなる?
有価証券報告書の虚偽記載は、金融商品取引法に違反する犯罪で、同法197条により、報告書の内容にうその記載があった場合の罰則は、個人は10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、法人は7億円以下の罰金とされています。
投資家が正しい情報に基づいて判断できるよう保護することが目的で、影響が大きいと証券取引所が判断すれば、上場廃止になる場合もあります。このため、虚偽記載が発覚すると、上場企業やその経営陣にとっては、きわめて深刻な事態を迎えることになります。
カルロス・ゴーンとは
カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)は1954年ブラジル出身の64歳。
ルノーと日産は、2010年以降全世界自動車市場の約10%のシェアを保っており、ルノー、日産自動車、三菱自動車工業の株式の相互保有を含む戦略的パートナーシップを統括する「ルノー・日産・三菱アライアンス」の社長兼最高経営責任者(CEO)をも兼務しています。
彼が大学を卒業してからのサクセスストーリーは主に以下のようになります。
1978年:欧州最大のタイヤメーカー、ミシュランに入社
1985年:30歳で3億ドルの市場を持つ南米ミシュランの最高執行責任者に任命
1990年:ミシュランの北米の最高経営責任者(CEO)に昇格
1996年:ルノー社に入社
1999年:日産の最高執行責任者に就任
2005年:ルノーの取締役会長兼CEO
2016年:日産は三菱自動車工業の34%の投資買収を完了し、三菱の会長に就任
世界的にも高所得
日産自動車が2017年に開いた株主総会で、2016年度のカルロス・ゴーン会長への報酬額が10億9800万円だと明らかにしています。
これに対して当時のゴーン会長は、
「日産は上層部に対し競争力のある報酬を支払っていると同時に財務規律を徹底していることを意味する。当社の経営陣は競合他社も獲得を狙っており、当社は競争力のある報酬を維持することで優秀な人材をつなぎ留めなくてはならない」
と述べて、株主に理解を求めています。
2018年6月に開催された、完成検査不正が発覚した2017年度の株主総会では、年間報酬を7億3000万円と開示しています。
前年度に比べて33%減と、日産からの報酬は4年ぶりに10億円を下回ったものの、ルノーの会長兼CEO、三菱自動車の会長も兼ねていることもあり、三菱自動車の2億2700万円を合わせると9億5700万円、さらに、ルノーの役員報酬は740万ユーロ(約9億6200万円)をあわせると17年度の役員報酬は20億円に迫る超高額報酬を受け取っていました。
やっちゃえ日産 極まれり
特捜部はゴーン会長を逮捕し、報酬を過少申告した動機や経緯について取り調べるものとみられ、長年にわたり高額報酬を受け取っていたゴーン会長が、一体いつから不正を働いていたのかが注目されます。
高額な報酬の理由として上記のように「優秀な経営者をつなぎとめるためには高額報酬が必要で、財務規律もその分しっかりしている」と述べていますが、そのトップが不正を行っていたと言うのは、ずっこけるしかありません。
日産自動車はゴーン会長に対し、取締役会で解職を提案するとのことです。つまり少なくともゴーンはトップの座から退くと言うことを意味します。
ゴーンだけに、「He’s gone.」と言われてしまうのでしょうか。
日産自動車で起きた完成検査不正の問題では、管理体制の杜撰さが浮き彫りとなり、大きなイメージダウンとなりました。そこへ追い打ちをかけるような今回の出来事ですが、これに関しては日産がどうという前に、ゴーン会長個人がまず批判されるべきでしょう。日産自動車内部の通報を受けて調査されていたようで、社内のゴーン反対派が反旗をひるがえしたと思われます。
情報を待ちましょう。
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