日産の経営不振が突如として明るみとなり、会社の存亡が危ぶまれています。
日ごろから感じていた日産への違和感を振り返ってみると、今回の騒動に結び付くものがありました。
目次 [非表示]
消えたブランド力
どんな企業にもブランド力という言葉がつきまといます。
このブランド力を築き上げるには相当な年月を必要とし、自動車メーカーの場合、高性能・高品質な製品をタイムリーに生み出し続けなければ獲得することはできません。今存在している自動車メーカーはそれぞれにこのブランド力があるからこそ存続してこれたわけです。
例えば今では当たり前になったハイブリッドカーをトヨタが世界で初めて世に送り出した当時、一般の人からしたら未知のパワートレインを積んでいるわけですから、ガソリン車が当たり前の時代にわざわざ選ぶ理由がありませんでした。しかしそこで発揮されるのが「トヨタブランド」です。「トヨタが作っているのだから、大丈夫だろう。」という思考がハイブリッドカーを選ぶ大きな支えになったわけです。
このように自動車メーカーにおけるブランド力というのは、そのメーカーへの信頼に直結します。
では日産ブランドの強みとはなんでしょうか。
①EV得意なの?得意じゃないの?どっちなんだい
世界に先駆けてEVを販売していたものの未だにそのランナップは乏しく、何年も前からテスラや中国をはじめとした新興メーカーに出し抜かれています。初代リーフの発売は2010年ですが、2024年時点でいまだに2017年に発売した2代目という恐ろしいほどの進歩の無さ。EVが強みというなら既に4代目が出てきてもいい頃です。
同社の主力となるはずだったアリアも販売不振。テスラほどのブランド力もなく、中国メーカーほどの斬新さもなく、日産のファン以外が選ぶ理由が見つかりません。そして、とにもかくにも新型車の投入が遅すぎます。これではEVが得意とは口が裂けても言えない状況です。
リーフというブランドは死んだも同然
②古すぎるモデル
エルグランドを一体いつまで放置しているのでしょうか。
売る気がないならさっさと生産終了すべきですが、そうしないのはおそらく終了しても次の車が無いからでしょう。
三菱のデリカD:5も同じく長いこと生産されていますが、こちらはマイナーチェンジを繰り返し商品力を向上させ販売台数はむしろ上向いています。古いから売れないのではなく、ただ単に日産の怠慢でしかありません。エルグランドの担当者って一体何してるんでしょうか。
GTRは基本設計をそのままにマイナーチェンジを繰り返していますが、見た目も大きく変わらないため誰もが飽きてしまいました。登場した当時は誰もが憧れるスーパーカーでしたが、今は見る影もありません。相変わらず海外向けには新型モデルを投入する方針のようですが。
普通の人は買わない
胡散臭いCM
日産のCMは度々物議をかもします。
EVの魅力を伝えるために同社のスポーツカーをコケにしたりと、本当に車を使うユーザーのことを考えているのか疑わしいような、まるで目の前のことばかりに注力して周りが見えていないような独りよがりで自分勝手な広告が目立ちます。
ほんとにNo.1?
日産のノート、ノートオーラが2023年の国内販売でコンパクトカー販売台数No. 1を達成したとのことですが、これには注釈があり、日産ではコンパクトカーを排気量1,600cc以下、全高1,550mm以下の小型・普通乗用車を定義しています。しかしコンパクトカーの定義は明確に決まっているものではなく、一位になるように日産が勝手に決めているのです。
他社が受注停止だからって
また、ミニバンのセレナは2023年度下半期~2024年度上半期の国内販売において、ミニバン販売台数No.1を獲得したことを発表しています。これはちょうどトヨタのノア、ヴォクシーが受注停止していただけであり、たまたま一位になっただけと言えます。
別にすごくない
日産のEVを紹介するCMではサクラ、リーフ、アリアがテストコースを走っているシーンがあり、さも凄いことをしているかのような見せ方をしていますが、テストコースを高速で走ることなど30年前の軽自動車でも可能です。それともEVではこれまで不可能だったのが可能になったんでしょうか?何が言いたいのかさっぱりわかりません。
自動運転のCMでは自動で障害物を避けるような描写がありますが、この機能の付いたモデルが販売されているのかといえば、されていません。ただの紹介映像であり「こんな技術があります、すごいでしょう」と言いたいだけです。こんな無意味なCMがあるでしょうか。
【企業】 TVCM 「THE WALL」篇 60秒
金使いすぎ
それを裏付けるように、東洋経済オンラインが各社の広告宣伝費を調査した結果、2023年9月期から2024年8月期までの1年間で日産は3218億円を使用しており業界全体で第2位でした。国内自動車メーカーではトップの広告費を使っていたのです。
「上辺だけよく見せる」ことに大金を使っており、これでは肝心な製品開発を蔑ろにしていると思われても仕方がありません。まるでモデルの少ない国内向けにはこうしたCMでお茶を濁す意図があったかのようです。
出典:1位は4000億超!広告宣伝費が多いトップ300社 1000億円以上の広告費をかける企業は12社 | 企業ランキング | 東洋経済オンライン
なぜいい車を作らない?
あたりまえですが、リストラをしたら車が売れるようになるわけではありません。
魅力的な車を開発してヒットさせない限り、状況が好転することはありません。思い返してみればここ数年、わくわくするようなモデルが全く登場していません。
トヨタがランドクルーザーやプリウスというブランドを進化させ、マツダは高級路線に挑戦し、三菱が4WD技術を詰め込んだトライトンを国内販売し、ホンダがフリードでカーオブザイヤーを受賞している頃、日産は何をしてきたのでしょう。
唯一出てきたフェアレディZも、発売後すぐに受注停止の上、未だに納期未定という有様。これでは売ってないも同然です。街で見かけることはほぼありません。せっかくの注目車種もおざなりなマーケティングで台無しです。残念ながら日産のブランド力を持つ車はすべて賞味期限切れ状態です。ラシーンやキューブを復活させることぐらい検討できなかったのでしょうか。
かろうじて残るのはスカイライン、エルグランドぐらいですが、スカイラインはセダン必須のため難しいでしょう。つまりエルグランドで当てないと後はないのです。これが日産としての最後のチャンスといえるでしょう。