軽自動車の人気はとどまるところを知りません。
日本自動車工業会が2020年5月5日までにまとめた2019年度の乗用車市場に関する動向調査によると、乗用車の保有全体に占める軽乗用車の比率はなんと38%という高い比率であることが分かりました。
維持費の安さなどが評価され、地方を中心に存在感が高まっている軽自動車ですが、かねてより商用車としても一定の存在感を保っています。
その中でも異質な存在、「三菱・ミニキャブMiEV(以下ミニキャブ)」を紹介してみたいと思います。
目次
バックグラウンド
ミニキャブの初代は1966年の発売。現行モデルは6代目をベースにEV化し2011年に発売した軽商用バンです。
初代ミニキャブ
外観
ミニキャブ 「”運ぶ”がすべて新しくなる。」
【カラーバリエーション:モノトーン2色】
ミニキャブはもともとガソリン車でしたが、2011年にEVモデルを発売。ガソリンモデルは2014年に販売を終了していますが、電気自動車の軽バンとして2021年の今でも唯一の存在を誇ります。古典的なバン形状により、十分に広い荷室を確保しています。
電気自動車ならではの高い環境性能をはじめ、動力性能、静粛性、快適性などに優れています。
内装
ミニキャブのインパネはガソリンモデルが発売された1999年のものをそのまま使用しており、一昔以上前の水準で、EVという割には質素極まれりな印象です。
メーターには駆動用バッテリーの放電(Ecoゾーン / Powerゾーン)と充電(Chargeゾーン)を表示し、電力の使用状況が読み取れるようになっています。
積載能力
荷室長 (mm) |
荷室高 (mm) |
荷室幅 (mm) |
荷室床面 地上高(mm) |
スライドドア 開口幅(mm) |
最大積載量(kg) | |
ミニキャブ | 1,830 | 1,230 | 1,370 | 675 | 735 | 350[※200] |
ミニキャブはEVなのでバッテリーの容量が気になるところですが、軽商用バンとしての平均的で十分な積載能力を確保しています。グレードによっては簡易的な後部座席が用意されており4人乗車が可能です。※4名乗車時
スペック
サイズ
ミニキャブ | |
FR | |
全長(mm) | 3,395 |
全幅(mm) | 1,475 |
全高(mm) | 1,915 |
ホイールベース(mm) | 2,390 |
駆動方式はFRのみ。最小回転半径は「4.3m」です。
※軽自動車
・排気量:660cc以下
・全長:3400mm以下
・全幅:1480mm以下
・全高:2000mm以下
・定員 4名以下
・貨物積載量 350 kg以下上記項目を1つでも上回ると小型自動車(登録者)となります。
エンジン
ミニキャブはEVなのでエンジンは搭載していません。
ミニキャブ:1種(モーター)
・永久磁石式同期型モーター(CD 16.0kWh)
燃費
燃費(km/L) | ミニキャブ |
2WD |
|
CD16.0 | |
JC08モード [国土交通省審査値] | – |
WLTC[国土交通省審査値] | – |
市街地モード | – |
郊外モード | – |
高速道路モード | – |
JC08モード 一充電走行距離 |
150km |
航続距離は満充電で150kmとなっています。これはエアコンやオーディオの使用状況によって変動しますが、三菱自動車が実施した全国のドライバーアンケート調査によると、軽キャブバンが1日に走行する平均距離は77%の方が65km以下だといいます。
近場をルーティン的に回るような使い方なら経済的と言えます。
先進安全装備
最近の自動車には当たり前の先進安全装備をみてみましょう。
<ミニキャブの先進安全装備>【該当なし】
ミニキャブには自動ブレーキや、誤発進抑制機構といった先進装備が搭載されておらず、サポカーへの該当はありません。
(標準装備:0グレード/0グレード)
価格
グレード | 駆動方式 | メーカー希望小売価格(消費税込) |
CD16.0kWh(2シーター) | 2WD | \2,431,000 |
CD16.0kWh(4シーター) | 2WD | \2,453,100 |
EVということもあり大幅に高く設定されていますが、補助金や免税の対象となるので、実際はもう少し値下がりするようです。
マイナーチェンジ?
一時生産終了のニュースが流れていましたが、大幅な改良を行いしばらく存続することが確認されています。
航続距離を伸ばすにはバッテリー容量を拡大するほかありません。価格が気になるところですが、これからのカーボンニュートラルの時代においてモデル廃止はその流れに沿わないと判断されたと考えられます。
三菱自の軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」、存続危機から一転 数年内に大幅改良
三菱自動車が軽商用の電気自動車(EV)「ミニキャブ・ミーブ」の航続距離を伸ばすなど大幅に改良したモデルを数年以内に投入する。政府が2050年のカーボンニュートラルを打ち出したことで、法人や自治体でEV導入の機運が高まっているためだ。販売開始から10年が経過し、風前の灯だったモデルが土壇場で起死回生を果たす。
さらに商用車とはいえ先進安全装備がないことも気になります。90年代のインテリアも相まってどうしても割高に見えてしまいますが、実際はそこを改善してしまうともっと価格は上がるので、いい意味で割り切っているとも言えます。
しかしそれを逆手にとり、アウトドア向けのモデルがあっても面白いと思います。いずれにせよただの商用車としてではなく、もう少し一般にも向けたアピールをすれば、電気自動車の普及にも一役買うことができるのではないでしょうか。
まだまだ課題の多いEVですが、今後の展開に注目が集まります。
ミニキャブMiEVといえば発売当初は日産とスズキにOEM提供する予定でしたが、結局は実現しませんでした。近距離を配送して回るような商用車にはEVが適していますし、もっと各社で販売できていれば三菱の先進性が評価されていたのではと思うと悔やまれます。
日本郵便にミニキャブMiEVが納入された一方で、佐川急便の中国製EV導入には三菱の上層部でも問題視する意見が出たのではないでしょうか。マイナーチェンジがどういった方向性で行われるのかはまだ不透明ですが、モデル存続という判断自体は正解だと思うので今後に期待したいですね。
OEMについては聞いたことがあります。
やはり思っていたほど訴求力がなかったのが原因でしょうか。
日本郵便へは当初EVベンチャーがスバル・サンバーをベースにしたEVを納品する候補にありましたが、車両仕様のゴタゴタで頓挫していましたね。
それもあってかなんとか三菱が選定先に選ばれましたが、何故堅実なメーカー製を最初から検討しないのか疑問です。
佐川急便についても同じことが言えますね。中国製EVについては耐久性とメンテナンス性を考えた時にトータルコストがどうなるのか見ものです。