ポルシェと言えば、世界を代表する高級スポーツカーメーカーのひとつです。
しかしそんなポルシェは90年代、中国で安い車を製造しようとしていたのをご存知でしょうか。
ポルシェ – C88
ポルシェC88は1994年、中国政府が国際的に自動車メーカーを国内招致をするプロジェクトの一環として、家族層向けに設計された正真正銘ポルシェ製の車です。
ポルシェのエンジニアたちによりわずか4カ月で完成させ、1994年北京オートショーにて初展示・公開されました。
この4ドアコンパクトサルーンは、他のどのポルシェ車とも似つかず、ポルシェのエンブレムさえも採用されることはありませんでした。チャイルドシートを1つだけ設置できるように設計されているのは、中国の一人っ子政策を反映したものです。この車はCEOであるヴェンデリン・ヴィーデキング氏自らによってマンダリン(中国公用語)でプレゼンテーションされました。しかし中国政府からの直々のプロジェクトであったにも関わらず1995年には白紙、市販化する事はありませんでした。
このプロトタイプは現在ドイツのシュトゥットガルトにあるポルシェミュージアムに展示されています。
ポルシェミュージアムのディレクター ダイエッター・リンデンバーガー氏によると、
中国政府は「有難う。このアイデアはただでもらっていくよ。」と言った。今中国の車を見てみると、我々が作ったC88の面影を随所に見ることができる。
と語っています。
C88はインド市場にも乗り出すつもりでしたが、成功しませんでした。近年ではアウディ RS2やラーダ サマラ、セアト イビザといった小型車の製造にポルシェが関わっています。
なんともいえないつまらないデザインの車ですが、1994年という時代を考えると、悪くもないように思います。中国での販売は中国政府の裏切りとも言える行為により叶いませんでしたが、これは結果的にブランドイメージを損なわずに済んだということもできます。
ポルシェとしては消したい過去なのかもしれません。