SUVが人気の昨今。
小型と割り切ったトヨタ・ライズ、ダイハツ・ロッキーの大ヒットもあり、ますますSUVの人気が高まっています。
売れる要素は様々ですが、今なら確実に売れたであろうモデルが、かつてホンダから発売されていました。それがホンダ・クロスロードです。
その理由とともにご紹介します。
目次
ホンダ・クロスロード
初代はランドローバー・ディスカバリーのOEMとして1993年から1998年まで販売されました。名前はホンダ車であっても実際には英国車であったため、一部のディーラーでは整備ができないなど、CR-V登場までのつなぎ役的なモデルでした。
初代クロスロード
そして9年後の2007年2月22日、3ナンバーサイズで3列7人乗りのクロスオーバーSUVとして2代目クロスロードは登場します。
しかし2010年8月に販売不振を理由に生産・販売を終了します。販売期間はわずか3年8か月と短いものでしたが、今考えると良くできたSUVだったと思わせる理由がいくつもあります。
デザインが武骨
幅広のボディがどっしりとした安定感を強調。さらにグリルとバンパー中央部、エアインテークの左右幅をあわせ、フロントマスクに大きなスクエアを形成。きっちりした縦のラインで構成することで、力強さを主張しています。
スクエアなイメージを追求しながら、ルーフに向けてキャビンを絞り込むことで、スタイリッシュなイメージを持たせたリアデザイン。また、ツインエキゾーストパイプの採用によってスポーティさを強調しています。
最近は丸みを帯びたクーペスタイルよりも、よりアウトドア感のあるスクエアなデザインがトレンドになりつつあります。かといって泥臭すぎず、洗練されたクロスロードのデザインは、古さを感じさせないタイムレスな魅力があります。
もしもの3列シート
室内の広さもさることながら、3列シートまで用意しているのが大きな特徴です。
ホンダお得意のパッケージング技術で、車内の隅々まで効率よくスペースを活用しています。それによって生み出された開放的な室内空間は、1、2列目シートはもちろん、3列目シートにも十分な余裕を与えています。
特に質感、座り心地にこだわった3列目シートは、クッションのフレームをワイヤー構造とし、ウレタンを厚めにすることで、柔らかな座り心地のシートを実現。2列目シートの下につま先が入る足入れスペースを確保するなど、乗員の乗り心地を最大限考えたレイアウトです。
3列目は床下収納式。荷物の運搬にも邪魔になりません。
ギア感のあるインパネ
ホンダが「タフ&モダン・コクピット」というインパネは、先進的な上質感と、アウトドアツールのような力強さが融合した新感覚のデザイン。
さらにメーター類やスイッチなどの視認性や直感的な操作性も追求し、機能を備えたデザインとしています。
メーターは立体感のあるユニークなデザイン。個々のメーターの大きさ、配置にも変化をつけ、リズム感のあるデザインが特徴です。またアンバーに輝くリング照明が上質感を演出します。
安心の4WDシステム
ふだんは燃費を抑えるFF状態で走行し、スタート時や加速時、雪上走行時など、必要に応じて後輪へトルクを伝達。走破性と低燃費、静粛性をあわせ持つホンダ独自のリアルタイム4WD。クロスロードには、その魅力をいっそう磨き高めた新リアルタイム4WDを採用しています。
後輪へトルクを伝えるデュアルポンプシステムにワンウェイカムユニットを追加することで、FF⇔4WDの切り換えにタイムラグがほとんどなく、路面の変化に素早く対応することができます。
このホンダ独自の4WDシステムは、2003年10月17日に発表された3代目オデッセイに初めて搭載されたのもので、当時のラインナップに幅広く展開されていました。
さらにホンダ車としてはじめて、坂道発進をサポートするヒルスタートアシスト機能を搭載。発進の際にペダルを踏み替える瞬間のクルマの後退を防ぎ(約1秒間)、不安のないスムーズなスタートを可能にします。
先進装備も充実
10年以上前の車ですが、当時から最新の安全装備を搭載しているのも魅力の一つ。今では当たり前の「自動ブレーキ」もグレード別で搭載しています。
追突軽減ブレーキ〈CMBS〉+E-プリテンショナー
警報とブレーキで追突事故の回避支援や被害軽減を図る追突軽減ブレーキ〈CMBS〉を設定。ミリ波レーダーにより前走車を検知、追突のおそれがあると判断した場合に音と表示でドライバーに注意を促し、さらに接近すると自動で軽いブレーキをかけて体感警報を実行。追突の回避が困難と判断した場合には自動で強いブレーキ制御を行い、ドライバーのブレーキ操作との相乗効果で追突速度の低減を図ります。並行作動するE-プリテンショナーは、追突の危険性が高まると、運転席シートベルトを弱く数度引き込み体感的に警告。さらに追突の回避が困難と判断した場合、運転席/助手席シートベルトを強く引き込み、乗員の拘束効果を高めます。
さらに高速道路などでの定速走行を制御するクルーズコントロールに加え、先進の車速/車間制御機能も備えたIHCC〈インテリジェント・ハイウェイ・クルーズコントロール〉。スイッチを入れると、フロントグリル内のレーダーからミリ波を送信し、前走車の状態を検出。適切なアクセル/ブレーキ制御で、走行速度に応じた車間距離を保持し、ドライバーの負担を軽減します。
まとめ
いかがでしょうか。
クロスロードがいかにオールマイティなSUVだったかがおわかりいただけたかと思います。しかし実際の販売台数は振るわず、月販目標である「3000台」は発売3ヵ月後からすでにクリアできなくなり、以降は月販数百台レベルという存在になってしまいました。
新しいジャンルのSUVとしてデビューしましたが、当時の某自動車情報番組では「SUVなのかミニバンなのかはっきりしない」「誰をターゲットにしているのか分からない」というような意見が出ていました。当時はSUVの3列シートがまだ珍しかったことに加え、ホンダ ストリームやオデッセイといったミニバンブームが続いていた時代でした。
ミニバンブームの時代に誕生したことが、まさに生まれる時代を間違えたということでしょう。現在のようなSUVブームであればヒット間違いないなしのパッケージだったのですが、それを先取りしてしまったクロスロードは、残念ながら報われない存在となってしまいました。
しかし現在、中古車市場では人気商品の一つとなっており、中古車市場では比較的高値で取引されているようです。
▶2007 Honda Crossroad CM Japan(ホンダクロスロード) – The Car Commercial Jero316
復活はどうか?
日本におけるホンダのSUVは2020年現在、ヴェゼル、CR-Vの2モデルとなっています。いずれもスタイリッシュで滑らかなデザインが特徴となっていますが、過去にはエレメントといったユニークで無骨なSUVを作っていました。
ヴェゼルとCR-Vの中間として、クロスロードのようなユニークで遊び心のあるSUVがあれば面白いかなと思います。N-BOXやN-VANからも分かるように、ホンダの空間活用術をもって角ばったSUVを作れば、これまでにないSUVが生まれそうです。