金融商品または企業・政府などの信用状態に関する評価を簡単な記号または数字で表示した等級を「信用格付(しんようかくづけ)」といいます。
日本では金融庁に登録を受けた格付会社が格付けを行っており、信用格付業者と呼ばれます。
債権の売買・保有を行う場合、こうした企業に対する評価を参考にするのですが、もちろん自動車メーカーも評価されています。
2020年~2021年現時点での各自動車メーカーの格付けを比較してみました。
目次
各社比較
各社の格付けを見てみましょう。会社によって公表している格付の種類は異なります。
格付けの種類、定義などについてはコチラの過去記事を参照ください。
※メーカーサイトに日付の記載がある場合はその日付となっていますが、記載がない場合は各格付機関におけるレポート発行時の日付としています。
トヨタ
(2020年9月11日現在)
格付機関名 | 長期債務格付 |
---|---|
スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) | A+ |
ムーディーズ | A1 |
格付投資情報センター (R&I) | AAA |
日本格付研究所(JCR) | AAA |
(R&I)トヨタ最上級のトリプルAに 2021/1/22
格付投資情報センター(R&I)は22日、トヨタ自動車の発行体格付けを「ダブルAプラス」から1段階引き上げ、「トリプルA」にすると発表した。構造変化が進む自動車業界のなかでも、トヨタの収益、財務の基盤は強く、負債の返済能力がさらに高まったと評価した。
ホンダ
日産自動車
(2020年12月31日現在)
格付機関名 | 長期債務格付 | 短期債務格付 |
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P) | BBB- | A-3 |
ムーディーズジャパン(Moody’s) | Baa3 | P-3 |
格付投資情報センター(R&I) | A | a-1 |
(S&P)日産の格付け「BBB-」に1段階引き下げ 2020/7/3
S&Pは、新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な自動車販売の急落に加え、大規模な構造改革に伴う費用負担が見込まれることにより、日産自の収益性には今後1―2年、同業他社よりも下押し圧力がかかると指摘。
(Moody’s)ルノーに続き日産を格下げ 見通しネガティブ 2020/2/20
今回の格下げについて、ムーディーズは、日産が米国事業の再建を目指す中での収益性低迷、赤字のフリーキャッシュフロー、提携する仏ルノーRENA.PAとの関係安定化を新経営陣が図っていく上でのかじ取りの難しさを考慮したと説明。格付け見通しは、収益性目標達成の可否について強い懸念が残るとのムーディーズの見方を反映するという。
(R&I)日産の格付け 1段階下げ 2020/6/4
格付投資情報センター(R&I)は4日、日産自動車の発行体格付けを1段階引き下げ、「シングルA」にしたと発表した。格付けの方向性はネガティブとした。日産自の業績は、過去の拡大路線の失敗と新型コロナウイルスの感染拡大を受け急速に悪化している。財務基盤への影響も含めて格下げを決めたという。
三菱自動車
(2020年6月23日現在)
格付機関名 | 長期債務格付 |
---|---|
格付投資情報センター(R&I) | BBB+ |
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P) | BB |
(S&P)三菱自を「BB」に1段階格下げ 2020/6/23
米格付け会社のS&Pグローバルは23日、三菱自動車の長期発行体格付けを1段階引き下げて「ダブルB」にしたと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け自動車市場が落ち込むなか、三菱自の収益性が低下し回復に時間がかかると判断した。
スズキ
(2020年8月27日現在)
格付機関名 | 長期債務格付 | 短期債務格付 |
---|---|---|
格付投資情報センター(R&I) | A | a-1 |
ダイハツ
(2021年1月25日現在)
格付機関名 | 長期債務格付 |
格付投資情報センター(R&I) | AA |
スバル
(2020年10月8日現在)
格付機関名 | 長期債務格付 | 短期債務格付 |
---|---|---|
格付投資情報センター(R&I) | A- | a-1 |
マツダ
(2020年9月11日現在)
格付機関名 | 長期債券格付 | 短期債券格付 |
日本格付研究所(JCR) | A- | – |
格付投資情報センター(R&I) | BBB+ | BBB- |
ランキング
信用格付け業者によって同じ会社でも評価は違っていますが、どのメーカーにも格付けを行っているR&Iの格付けを上記の格付け定義にのっとって並べてみましょう。
順位 | 企業名 | 長期・発行体格付(R&I) |
1 | トヨタ | AAA |
2 | ホンダ | AA |
2 | ダイハツ | AA |
4 | 日産 | A |
4 | スズキ | A |
6 | スバル | A- |
7 | マツダ | BBB+ |
7 | 三菱 | BBB+ |
こういった順位となりました。やはり新型コロナウイルスの影響は大きく、軒並み現状維持もしくは格下げとなっています。そのような中でもトヨタが最も安定していると言えます。
一方で苦しい状況が続く日産自動車ですが、収益性を早期に回復させることは難しいとの判断に加え、仏ルノーとの新経営体制の安定化には時間がかかるとの見方を示し、立て続けに格下げとなっています。
日産と資本提携関係にある三菱自動車に関しては、日産自動車との相乗効果等を理由に長期債務格付は「BBプラス」から「トリプルBプラス」へと格上げされていました。コロナ過においても現状を維持していますが、方向性はネガティブと評価されています。
これらの信用格付は、その会社および連結子会社が格付機関に提供する情報または格付機関が信頼できると考える他の情報に基づいて行われるとともに、発行する特定の債券に係る信用リスクに対する評価に基づいています。各格付機関は信用格付の評価において異なった基準を採用することがあり、かつ各格付機関が独自に評価を行っております。これらの信用格付はいつでも格付機関により改訂または取り消しされることがあります。
格付は債券の売買・保有を推奨するものではありませんが、こういったところからも、大まかに各企業の安定性を見ることができますね。是非気にしてみてください。
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