ミニバンに必須の装備であるスライドドア。
この機構を採用するにあたり車体側面にレールを設置する必要があります。しかし長く彫り込まれたようなレールは、ボディのデザインを大きく損なってしまいます。そのためできる限り目立たず上手くデザインに溶け込ませなくてはなりません。
2022年現在販売されているミニバンでランキングを作成しました。
目次
エントリー車種
2022年現在販売されている現行のミニバンを対象とします。※メーカーHPでミニバンカテゴリーとされているもの。OEMは除く。
・トヨタ:アルファード/ヴェルファイア、ノア/ヴォクシー、シエンタ、グランエース
・日産:セレナ、エルグランド
・三菱:デリカD5
・ホンダ:ステップワゴン、フリード
ボディラインにどれだけ溶け込ませることができているかを、「インテグレートレベル0~10」で評価します。このランキングにおいては1位から順に発表していきます。
integrate:ínṭəgrèɪt(米国英語), ˈɪntʌˌgreɪt(英国英語)
意味:統合する、統一する、まとめる、吸収する、合体させる、調和させる
インテグレートレベル9
トヨタ・アルファード/ヴェルファイア
日本を代表する高級ミニバンが名実ともにトップとなりました。
その特徴はボディとサイドガラスの境目にレールを配置することで、レールの存在を感じさせないレイアウトにあります。実はこのレイアウトは初代から採用されています。発売当初からのコンセプトが一切ブレていないことが明確です。
インテグレートレベル7
日産・セレナ
アルファードから2段階レベルが落ちてしまいます。
しかしセレナのスライドレールはボディのサイドラインに組み合わされ、目立たないレイアウトがなされています。プレスラインの影になる部分に配置するなど、デザインに溶け込ませるための工夫が見えます。
インテグレートレベル6
トヨタ・ノア/ヴォクシー
セレナ同様にプレスラインに沿って配置されています。しかしボディの比較的上の方に設定されていることやテールライトとの繋がりがないこともあり、やや目立つ印象です。
インテグレートレベル5
トヨタ・シエンタ / ホンダ・フリード
レールの配置に大きな工夫は見られません。しかし比較的コンパクトなミニバンということもありレールの長さが短く、そこまで目立っていません。特にシエンタのスライドドアは後方に大きく伸びたデザインとなっており、レールの存在を上手く消すことに成功しています。
インテグレートレベル3
三菱・デリカ
サイドのプレスラインに沿っているかと思いきや、そのラインはボディ後方で上へ流れておりレールが取り残されています。さらに特殊なのが、レール後方に別のパーツを埋め込むような形でレールを隠している点です。そのパーツはブラック塗装されており、レールとテールライトを繋げるデザイン上の意図が見えます。
インテグレートレベル1
ホンダ・ステップワゴン / 日産・エルグランド
サイドのプレスラインなどには沿うことなく、フラットな面に潔くレールが配置されています。ステップワゴンについてはシンプルなデザインコンセプトに合っているようにも思いますが、新型なのに工夫が見られないのも物足りない気がします。
エルグランドも同様にレールを目立たなくするような工夫は一切ありません。
インテグレートレベル0
トヨタ・グランエース
映えあるレベル0は、まさかのトヨタの最高級ミニバンであるグランエースとなりました。スライドレールは何の工夫もなくボディサイドに切り込まれているのはおろか、レールが独立したパーツとしてはめ込まれており、目立たなくするどころかむむしろその存在感を圧倒的に際立たせています。他のミニバンをみても類のない構造です。
それもそのはず、この車は主に新興国向けのハイエース(H300系)をベースに日本国内向けに高級化したモデルとなっており、ボディの基本構造は商用バンのそれなのです。インテグレートレベル0と評価せざるを得ません。
番外編
三菱自動車は「インナーレール方式」というレールを車体内部に設置する方式を開発。1991年発売初代RVRの後席左側スライドドアに世界初採用しました。
正確にはミニバンではなく、トールワゴン(2列シートミニバン)です。
機構が複雑になるなどのデメリットはあるものの、外観上にレールがない理想的なスライドドア構造といえます。
アルファードがインテグレートレベル9なのは、この車のようにレールが見えないスライドドアがレベル10だからです。残念ながら現状そういったミニバンは存在していません。
あまりレールの存在を意識して選ぶことは無いと思いますが、ボディが黒ならば自然と溶け込んで目立たなくなります。同じような見た目になりがちなミニバンですが、スライドレールひとつみても様々な工夫が文字通り見え隠れします。日本ではSUVと並んで人気のあるジャンルですが、この先のスライドドアにはどんな進化が起こるのでしょうか。楽しみですね。