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新型テスラトラックは1回の充電で500マイル走行可能。時速60マイルまでは5秒で到達できる。
テスラの完全電気トラックはEV業界初の貨物車となり、ディーゼルを燃料とする従来のトラックと同じように業界をけん引していくでしょう。それでいて性能は最新の電気スポーツカーに匹敵します。
性能とスペック
テスラモータースCEOのエロン氏は11月16日に行われたカンファレンスで、トレーラーをけん引している状態でも時速60マイル(約100km)まで5秒で到達できると宣言しました。36トンの荷物を運んでいるとした場合は20秒となります。
5%の勾配では、通常のディーゼルトラックの場合は時速45マイル(72km)のところを、「セミ」は最大積載量を加味しても時速65マイル(104km)の能力であるとしています。イギリスでの大型車両の制限速度は時速56マイル(90km)に制限されているため、十分な能力となります。
空気力学的デザイン
出展:autoexpress.co.uk
これらの充分なスペックに加え、1回の充電で500マイル(800km)走行可能にするとしています。さらに空力的な効率を追求した空気抵抗係数0.36cdという恐るべき数値は、通常のトラックの数値(0.65-0.70cd)はおろか、あの世界的スーパーカーであるブガッティ・シロンの0.38cdよりも勝っています。
これは「銃弾形状」のフロントノーズのおかげであり、自動調節可能なサイドフラップは後部のトレーラー形状にマッチさせることができ、底部を完全フラットにします。
航続距離、モーターと充電
空の状態から400マイル分の充電まで30分としており、これはアメリカのトラックドライバーに法的に与えられる最低限の休憩時間と同じです。テスラの新型「メガチャージャー」によってそれは可能となり、従来の充電器とは違いソーラーによって稼働させることで、低価格で変動のない保証された充電率を得ることができます。しかしテスラの乗用車に使用する充電ポートとはフォームが違っており、トラックと乗用車での充電ステーションは差別化されるようです。
独立した4個のモーターとサスペンションがスムーズな乗り心地を与えます。運転席はこれまでと大きく違いキャビンの中心に位置し、ハンドル側部に設けられた2つのスクリーンで安全なモニタリングが行えるようになっています。また一般的な電気自動車同様に、この「セミ」もフロントボンネット内部はトランクスペースとなっています。
出展:autoexpress.co.uk
安全性でいえば、このトラックには自動ブレーキ、衝突アラートや車線保持アシストが備わっています。空力的デザインと中央の運転席は、このトラックが低重心であることを意味しています。つまり前輪が浮き上がるジャックナイフのような現象が起こることは「不可能」であるとしています。その他の安全装備として、それぞれの車輪に搭載された独立したモーターがトルクを必要に応じて分配することが可能となっています。
4つに分けて搭載されたモーターのおかげで、ドライブトレーンの寿命は100万マイルとしています。仮に4つのモーターの内2つが動かなくなったとしても、残りの2つで走り続けることができ、それでもディーゼルトラックと同じような性能を保つことができます。
ブレーキは発電にも利用する回生ブレーキを採用し、減速時の動的エネルギーを回収しバッテリーに保存できます。テスラが言うにはブレーキの交換は必要なく、これはドライバーや会社にとっても維持費の節約にもなります。ウインドウは通常のものより薄いガラスでできてきますが、噂によると「核爆発」にも耐えられるそうです。
維持費
テスラによると「セミ」の1マイル当たりの維持費はおよそ1.21ドル(134円)としており、これはディーゼルトラックの1.51ドル(168円)に比べ若干優れています。長距離輸送を想定した場合、優れた空力的デザインのおかげでこうしたコストを約0.8ドル(89円)に削減することができ、通常のトラックの2倍経済的かつ貨物列車よりも効率的となります。
生産は2019年開始としていますが予約はすでに受付を開始しています。さらに、より小型の「ピックアップ」バージョンも公開されており、普通免許で運転できるようなものを考えているとしています。
参照:autoexpress.co.uk
まとめ
テスラの電気トラック「セミ」は2019年発売開始予定となっており、この未来的トラックが地上に出てくる日も近いです。(残念ながら日本にはこないでしょうが)
しかしトラックの電気自動車というと航続距離が心配なところです。実際の航続距離はこの発表値を下回ることが予想されますので、充電切れの心配を無くせるような充電ステーションの拡充が急務といえます。発売される2019年の時点でステーションが不足していれば販売数にも影響しそうです。
電気自動車のトラックと言えば以前に私がまとめた「トロリートラック」という方法も存在します。
こちらは2016年にハンガリーで試験運用が開始した電線から給電を行うタイプのトラックで、Eハイウェイと呼ばれる高速道路で運用されています。
トラックには架線から電気を引き入れるパンタグラフが装備されており、自由に電気の供給を受けたり止めたりできる仕様になっています。架線がない場所ではパンタグラフを降ろし、ディーゼル燃料で走行することができます。つまり大がかりな電気とディーゼルのハイブリッドというわけです。
今回のテスラの発表も踏まえ、こうした貨物車にも電化の波が確実に起きていることを示しています。いずれは飛行機やロケットも電気になっていくのでしょうか・・・。とにかく今後の流れを含め、「セミ」にも注目していきたいと思います。