4WDと聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
4輪ともに力強くパワーを発揮して、どのような路面状況でも確実に進んでいけるようなイメージをお持ちではないでしょうか。だとしたら、それは大きな誤りです。
目次
トヨタ・プリウス E-Fourの例
2023年に発売、販売されている5代目トヨタ・プリウスには2WDと4WDのモデルが存在し、そのうち4WDにあたるのが“E-Four”システムを搭載したモデルになります。
E-Fourとは
後輪をモーターにより駆動させる電気式4WDで、前輪との機械的な接続はありません。
トヨタのホームページにはE-Fourについて以下の記述があります。
緻密さと力強さを兼ね備えたE-Four。
モーター出力向上により4WDの作動領域やリヤへのトルク配分を拡大。滑りやすい路面でのさらなる安心感に加え、ドライ路面での力強い発進や旋回時のライントレース性を向上しました。
E-Fourは、機械式4WDとは機構および性能が異なります。様々な走行状態に応じてFF(前輪駆動)走行状態から4WD(4輪駆動)走行状態まで自動的に制御し、安定した操縦性・走行の安定性および燃費の向上に寄与するものです。
これ以上の説明がないので分かりにくいのですが、あくまで「前輪走行をアシストするための電気式4WDシステム」ということです。悪路や雪道でどの程度役に立つのかは記載されていないので、実際の道路環境での効果は未知数と言うほかありません。
しかし、実際に後輪がどれだけの力を持っているのか、テストした動画があります。
ローラーテスト
▶The 2024 Toyota Prius AWD Fails the TFL Slip Test: Here’s What Happened!
アメリカのカーメディア TFLCARが、このE-Fourシステムの効果を確認するテストを行いました。以下簡単に説明します。
①E-Four(海外名AWDe)のモデルを用意し、まずは後輪をローラーにのせスリップしやすい状況を再現します。つまり前輪の駆動のみで脱出するかをテストします。プリウスはFFなので、このテストは全く問題ありません。
AWDのシステムは1.8Lガソリンエンジンのシリーズハイブリッドですがこれは全て前輪向けのものです。後輪はエンジンと機械的に繋がっておらず40馬力のモーターにより駆動します。
②今度は前輪がスタックした場合を想定し、後輪のみで脱出できるかをテストします。ノーマルモードでアクセルを踏みますが、動きません。スポーツモード、エコモード等どれを試しても動きません。スノーモードのような機能はありません。
③雪を想定した追加テストを実施します。左前輪、右後輪をローラーにのせ、アクセルを踏みます。少し苦労しましたがノーマルモードでなんとか脱出できました。
④今度は3輪をスリップさせます。後輪2輪、左前輪をローラーにのせます。ノーマルモードでアクセルを踏みますが脱出できません。前輪がローラーのフレームに乗ったことでトラクションがかかりなんとか脱出できました。
⑤前輪2輪、左後輪をローラーにのせます。ノーマルモードでアクセルを踏みますが脱出できません。スポーツモードでトラクションコントロールを切っても無理です。人に押してもらい、ようやく脱出できました。
トヨタはパワーが向上したといいますが、十分とは言えませんね。
その価値なし?
限られた場合にのみ作動する後輪なので、雪道での発進やFFに比べて安定性が高いという以外に恩恵はほぼ感じられません。FFでもちゃんと運転すればカバーできる内容ですので、これをオールマイティな4WDだと思いこむと、悪路で痛い目を見ることになりそうです。
しかしグレードとして存在し、当然FFのモデルよりも価格は高くなります。比較してみましょう。
価格 | 2WD | 4WD |
Z(ハイブリッド) | \3,700,000 | \3,920,000 |
G(ハイブリッド) | \3,200,000 | \3,420,000 |
4WDグレードは2WDに比べて220,000円価格がUPしています。
当然、4WDの方が重量がUPしていますので燃費が落ちます。燃費を落とすだけの価値があるかと見るかどうかは個人の判断にゆだねられます。
燃費(WLTC)km/L | 2WD | 4WD |
Z(ハイブリッド) | 28.6 | 26.7 |
G(ハイブリッド) | 28.6 | 26.7 |
しかし、世の中の4WDは今やほとんどがこのシステムと同様のものです。前輪駆動をメインとし、モーターで後輪を駆動させてアシストするのが最近の4WDシステムです。とはいえ、前後輪のトルク配分やモーター出力によってその味付けは大きく変わってきますので、このシステムが一概に役立たないわけではありません。
4WDを検討される際は、後輪にどの程度重きを置いているかを意識してみてください。