大手自動車部品メーカーの曙ブレーキが事業再生ADR手続きを申請しました。
北米での業績不振が経営に影響を与えたようですが、今後の活動への影響が注目されます。
目次
曙ブレーキ、事業再生ADR手続を申請
曙ブレーキは1月30日、北米事業不振などの影響による経営悪化を受け、事業再生ADR手続を申請、金融機関の支援を求めると発表した。
事業再生ADR制度は、経済産業大臣の認定を受けた公正・中立な第三者が関与することにより、過大な債務を負った事業者が法的整理手続によらずに債権者の協力を得ながら事業再生を図ろうとする取組を円滑化する制度。会社更生法や民事再生法などと違い、対象債権は金融債権に限られる。
曙ブレーキは、生産混乱が発生した北米事業について、組織・管理体制の抜本的な改革、生産性の改善、生産能力の増強、収支構造の改革に取り組んでいた。しかし、米国メーカーの乗用車生産からの撤退や、生産混乱に起因して次期モデル用ブレーキ製品の受注を逃すなど、新たな課題が発生。同社グループの経営環境および財務体質は厳しい状況となっていた。
このような厳しい経営状況を踏まえ、同社は、事業再生ADR手続を利用して、金融機関の合意のもとで、今後の再成長に向けた強固な収益体質の確立と財務体質の抜本的な改善を目指すことを決定。1月29日、事業再生ADR手続の正式な申請を行い、同日付で受理。2月12日開催予定の第1回債権者会議にて、全取引金融機関に対し、事業再生計画案の概要説明などを行う予定だ。
出典:response
トヨタが出資か?
東京証券取引所第1部に上場する自動車部品製造の曙ブレーキ工業は30日、私的整理の一種である「事業再生ADR」を第三者機関に申請し、受理されたと発表した。取引銀行に借入金元本の返済を一時停止してもらうなどの支援を求める。また筆頭株主のトヨタ自動車に出資を打診したことも判明。事業を継続しながら経営再建を図る考えだ。
既に主力銀行などに説明を始めている。米国で自動車メーカー向けの受注が減少し、資金繰りに行き詰まったのが主因とみられる。曙ブレーキは「一般の取引先には影響を及ぼさない」としている。
トヨタは18年9月末時点で、曙ブレーキ株を11・62%保有している。曙ブレーキは30日までに増資引き受けを求めたもようだ。
一方、トヨタは「現時点で増資要請を受けたという事実はない」とのコメントを出した。
出典:SankeiBiz
この一連の報道について、1月30日曙ブレーキは公式に見解を発表しました。
本日の一部報道について 2019年1月30日付の日本経済新聞におきまして、当社が「トヨタ自動車株式会社に増資引き受 けなどの支援を打診した」との報道がありましたが、報道内容は当社として発表したものでは無 く、またそのような事実はございません。 今後、開示すべき事実を決定した場合は、速やかに公表します。 以上
出典:曙ブレーキHP
曙ブレーキとは
埼玉県に本社を置く自動車部品メーカー。
1929年に創業し、主に自動車用ブレーキを中心に生産。トヨタ、日産や米GMを中心に各完成車メーカーへの供給を行っていおり、ブレーキパッドの日本と米国市場のシェアは4割に達します。
2005年に筆頭株主であった米国の自動車部品メーカー・デルファイが供給先のGMの経営不振などのあおりを受けて保有株を全てトヨタ自動車に売却し、現在はトヨタが筆頭株主となっています。
自動車用のみならず、新幹線のブレーキライニングおよびキャリパーなど鉄道車両向けのブレーキも生産しており、新幹線の非常用ブレーキは1964年開業以来、提供し続けています。
モータースポーツに影響か?
車好きであれば必ず知っている曙ブレーキですが、曙ブレーキはフォーミュラ1への活動として、2007年よりマクラーレンチームへオフィシャルサプライヤーとしてブレーキキャリパー、マスターシリンダー、ブレーキバイワイヤ油圧ユニットなど多くの部品を供給しています。2014年にはパートナーシップ契約を強化し、マクラーレンチームのテクノロジーパートナーとなりました。
同社部品を採用するマクラーレン「MCL33」
ほかにもFIA世界耐久選手権(WEC)やニュルブルクリンク24時間耐久レースでもトヨタ向けにブレーキキャリパーなどを提供しています。
経営不振には何かしらの事業整理がつきものであり、こうしたモータースポーツ活動が重荷と判断されれば部品供給への影響が心配されます。また、マクラーレン側が安定供給に不安があるとみなせば、長年続いてきたパートナーシップを解除することも考えられます。
今後の動向に注目です。
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