唐突ですが、ブレーキライトの位置が変な車を見たことはありませんか?
ブレーキを踏むと光るはずのところが光らないのには、実はもっともな理由があるのです。本記事でその謎が少しでも解消できればと思います。
目次
EUの法律によるもの
ミニ:クラブマン
現行で言えばミニ:クラブマンが代表的な例です。リアゲート上の大きなライトはブレーキライトではなく、バンパー上の小さなライトがブレーキライトです。
2016年 ミニクラブマン 出展:raddit.com
大きい方が分かりやすくていいじゃない!
と誰もが思うことですが、これはヨーロッパの保安基準によるもので、「ブレーキライトはボディの可動部には設置できない」と定められていることが原因です。
つまりトランクのような可動部にブレーキライトが付いていると、トランクを開いたときに後ろから確認できないため、設置することができないのです。
リアゲートを開くと大きなライトは見えなくなる 出展:car.com
実はこのクラブマンの先代モデルが、この法律をうまくかいくぐっていました。
2014年 ミニクラブマン 出展:starmoz.com
一見すると2016年モデル同様、リアゲート上にブレーキランプがあるように見えます。もしそうであれば、これを観音開きすればライトが隠れてしまいます。
リアゲートを開いても大丈夫 出展:autotrade.ca
しかし御覧のようにブレーキライトはボディに固定されており、リアゲートを開けても後ろからライトが見えるようになっています。デザインというより法律をクリアするためのアイデアだったのです。斬新ですね。
フェラーリ:カリフォルニア
この法律は世界のスーパーカーメーカー、フェラーリにももちろん適応されています。
フェラーリ:カリフォルニアはフェラーリ初のクーペ・カブリオレ2+2モデルとして2009年から発売されており、2014年には後継であるカリフォルニアTが発売されています。いかにもフェラーリを感じさせるリアの丸いライトですが、これはバックライト・ウインカーであり、実際のブレーキライトはまさかのバンパー上の細いライトです。
フェラーリカリフォルニアT 出展:gtspirit.com
この車はカブリオレなので、屋根を開閉する際にトランクがライトごと稼働してしまいます。そのためこのような措置となっているのです。なんだか残念ですね。
ルーフ開閉時 出展:autocar.co.uk
もちろんカブリオレだからといって全てがこういうものではなく、デザイン上こうするしかなかったのです。しかし言い方を変えれば、ライトの位置が変わってしまっても、デザインを優先するというフェラーリの信念とも言うことができます。
国内の法規によるもの
三菱:パジェロミニ
現在は絶版となっていますが、かつて販売されていた軽自動車SUVの三菱:パジェロミニにも一時期おかしな位置にブレーキライトが設置されていました。これは上記の理由とは若干異なります。
出展:catalog.carsensorlab.net
上の写真は1998年から2013年にかけて販売された2代目パジェロミニです。
リアのライトがブレーキライトとして点灯していましたが、2008年頃テールランプに関する法規が変わり、右斜め後ろ・左斜め後ろからブレーキライトを視認できないといけなくなりました。
普通の車なら特に問題はありませんが、SUVのような背面タイヤがあり、さらにタイヤが右寄りに付いている場合など、左斜め後ろから右のライトが見えなくなってしまいます。
出展:carselection-and.com
この法規に対応するため、一時期販売されていたパジェロミニはバンパーにブレーキライトが移設され、ボディのほうはダミーになっています。同時期に販売されていた大型SUV、パジェロについても同じ措置が取られています。
しかし法規の適用後デザインを大幅に変更する際、背面タイヤを中央寄りに移動したことでこの問題は解消されました。
まとめ
いつの時代も、法律や法規によって車のデザインはその影響を大きく受けています。安全基準などの理由でリトラクタブルヘッドライトの販売が難しいことは有名です。今回ご紹介したブレーキライトについても、「本当はここにつけたかったんだけどな・・・」というような気持ちがあったはずです。
いろいろな規制でデザインが制限されていることが、似たり寄ったりな見た目の車が多いと感じる原因の一つなのかもしれません。
もし現代にリトラクタブルの新車が発売されたと考えてみると、それはとても魅力的なはずです。ですがそれはせず、いかに魅力的な車を作るか。メーカーにとっても非常に難しく、もどかしいところだと思います。