OEMとは(original equipment manufacturer)の略称で、他社ブランドの製品を製造すること、またはその企業を意味します。
自動車業界においては、他社製の車を自社のブランドとしてエンブレムを変更し販売しています。しかしOEMはラインナップを充実させる一方で、ブランド力があるわけではありません。したがってやむを得ない事情がない限り、OEMの提供元のモデルを買うのが一般的です。
そういった中で、OEMを販売するメーカーはどのようなうたい文句で販売をしているのでしょうか。気になったので調べてみました。
目次
スズキ エブリィは3社へOEM提供
エブリィは三菱、日産、マツダの3社にOEM提供されている優秀なモデルです。提供先の3社はいずれもかつては軽商用車を製造していましたが、いまや自社製のモデルは製造しておらず、すべてOEMに頼っている状況です。
スズキ エブリィ
➔三菱 ミニキャブバン
➔日産 NV100クリッパー
➔マツダ スクラムバン
安全装備
安全装備の記述を比較してみましょう。
スズキ:スズキセーフティサポート
安心して、楽しくスズキのクルマに乗っていただきたいという想いから生まれた「スズキ セーフティ サポート」。事故を未然に防ぎ、お客様の万一のときの安全を確保するために、運転をサポートする様々な技術で、ヒヤリとする場面も限りなくゼロに近づけていきます。
○レーダーブレーキサポート[衝突被害軽減ブレーキ]
追突事故の危険を察知して、衝突を回避、または被害を軽減。渋滞などでの低速走行中、前方の車両をレーザーレーダーが検知し、衝突を回避できないと判断した場合に、自動ブレーキが作動。追突などの危険を回避、または衝突の被害を軽減します。
○誤発進抑制機能
ペダルやシフトの操作ミスによる衝突の回避に貢献。停車または約10km/h以下での徐行中に、レーザーレーダーが前方の障害物を検知。シフト位置が「前進」の状態でアクセルを強く踏み込むと、エンジン出力を自動制御して急発進・急加速を抑制。駐車場などでの衝突回避に貢献します。
引用:スズキホームページ
三菱:e-Assist
先進の予防安全技術「e-Assist」搭載。<ブラボー ターボ>
事故の危険を検知してドライバーに知らせるとともに、被害を回避・軽減できるようサポート。できる限り事故被害を減らし、安全運転を続けてもらうために生まれた、先進の予防安全技術です。
○低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM-City]<ブラボー ターボ>
低速走行時、前方車両との衝突の危険がある時は、警報で注意喚起するとともに自動ブレーキで、衝突を回避、または衝突被害を軽減します。
○誤発進抑制機能(前進時)<ブラボー ターボ>
前方に障害物を検知している状態で、踏み間違いなどの操作ミスによりアクセルペダルを素早く、強く踏み込んだ場合は、警報とともにエンジン出力を抑制。発進をゆるやかにし、衝突被害を軽減します。
引用:三菱自動車ホームページ
日産:日産インテリジェントモビリティ
NV100クリッパーは事故を未然に防止する「予防安全性能」の試験において、高評価を獲得
NV100クリッパーの「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」搭載車は、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構による平成26年度自動車アセスメントの予防安全性能評価で、「先進安全車(ASV)」を獲得。 その高い安全性能が実証されました。
○インテリジェント エマージェンシーブレーキ[グレード別設定]
フロントガラス上部の赤外線レーザーレーダーで前方の車両を検知。衝突の危険性があるとメーター内の警告灯とブザーでドライバーに注意喚起するとともに、自動的に緊急ブレーキを作動させて衝突を回避、または衝突時の被害を軽減します。
○踏み間違い衝突防止アシスト[グレード別設定]
駐車操作など停車~約10km/h以下の低速走行時に、前方に壁などの障害物がある場合、アクセルペダルをブレーキペダルと間違えて強く踏み込んでしまうと、ドライバーにメーター内の警告灯とブザーで警告。さらに、自動的にエンジン出力を抑制することで、障害物への衝突被害を軽減します。
引用:日産自動車ホームページ
マツダ:名称特になし
もしもの時の安全と安心を考えた、レーダーブレーキサポートをはじめとする先進の安全技術。
○ブレーキを自動で制御し、前方不注意による「追突事故」の被害を
軽減するレーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)渋滞などでの低速走行中、前方の車両をレーザーレーダーが検知し、衝突を回避できないと判断した場合に、衝突被害軽減ブレーキが作動。衝突の危険回避をサポート、または衝突の被害を軽減します。
○ペダルやシフトの操作ミスによる衝突の回避に貢献する誤発進抑制機能
停車または約10km/h以下での徐行中に、レーザーレーダーが前方の障害物を検知。シフト位置が「前進」の状態でアクセルを強く踏み込むと、エンジン出力を自動制御して急発進・急加速を抑制。駐車場などでの衝突回避に貢献します。
引用:マツダホームページ
あれ?
ここで一つ疑問が生まれます。なぜ同じ車であるOEM車において、先進安全装備の名称がそれぞれ異なるのでしょうか。
このエブリィはご存知スズキ製であり、「スズキセーフティサポート」なる装備が搭載されています。OEMとして提供する際にまさか装備を乗せ換えるとは思えませんので、名前だけ変えてあるということが分かります。
さらにこのエブリィには一般的に言う「衝突被害軽減ブレーキ」と「ペダル踏み間違え時加速抑制装置」が搭載されていますが、それぞれの名称も独自のもに置き換わっています。まとめると以下の通りです。
メーカー | 安全技術名 | 衝突被害軽減ブレーキ | ペダル踏み間違え時加速抑制装置 |
スズキ | スズキセーフティサポート | レーダーブレーキサポート | 誤発進抑制機能 |
三菱 | e-Assist | 低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM-City] | 誤発進抑制機能 |
日産 | 日産インテリジェントモビリティ | インテリジェントエマージェンシーブレーキ | 踏み間違い衝突防止アシスト |
マツダ | 名称なし | ブレーキを自動で制御し、前方不注意による「追突事故」の被害を軽減するレーダーブレーキサポート | ペダルやシフトの操作ミスによる衝突の回避に貢献する誤発進抑制機能 |
マツダにはマツダの先進安全技術「i-ACTIVSENSE」という安全装備がありますが、その名を使用していないことになります。ここには経済産業省や国土交通省などが推奨する新しい自動車安全コンセプト「セーフティ・サポートカーS」(サポカーS)が関係しています。
このエブリィは「サポカーS」の「ベーシック」に該当していますが、マツダが「i-ACTIVESENSE」と名乗るのは「サポカーS」の「ワイド」に該当にする技術についてのみとなっています。OEMを受ける軽自動車にもサポカーSワイドに該当するものはありますが、基本的に自社製の登録車(デミオ、アクセラ、アテンザ、CX-3、CX-5、CX-8、ロードスター、ロードスター RF)についてのみ「i-ACTIVESENSE」の名を使用しています。
しかし三菱と日産はお互いの安全装備名を使用しています。調べてみると三菱のミニキャブバンにおける「FMC-City」の作動条件は、ミラージュのそれと同じであることが分かりました。つまり三菱とスズキの安全装備内容が全く同一であったためこの名が使用できているのです。
一方日産の「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」については、車種によってその作動条件が違うものの、いわゆる自動ブレーキの独自名称として使用しているものと分かります。
結論
・OEM車であっても独自の安全技術名、装備名を使用している。
・マツダはプライドがある。
今や自動ブレーキなどのシステムはメーカーび独自開発ではなくなっており、どこのメーカーが優位なのかはあまり関係無くなっています。
当たり前になっているシステムですが、その作動条件はしっかりと確認しておいた方がよさそうですね。