ホンダは2024年6月13日、軽商用バン「N-VAN e:」を発表しました。
軽商用EVとしては三菱自動車のミニキャブEVが存在し直接的なライバルとなりますが、人気のNシリーズに加わるEVに太刀打ちできるのでしょうか。
目次
外観
まずは外観を比較してみます。
ミニキャブEV
N-VAN e:
ミニキャブEVはもともとガソリン車として1999年に販売を開始して以来、基本的なボディ形状に大きな変更はありません。
N-VAN e:はフロントグリル部に充電ポートがある以外は、ガソリンモデルと大きな違いはありません。しかしより一般向けのグレードが用意されており、カラーバリエーションも豊富となっています。
外観:引き分け(好みによる)
内装
続いては内装を比較してみます。
ミニキャブEV
N-VAN e:
ミニキャブEVのインパネは一昔以上前の水準で、EVという割には質素極まれりな印象です。メーターは機械式、シフト操作はレバー式です。よく言えば割り切っており、従来の軽トラと同じ感覚で乗ることができます。
N-VAN e:のインパネは、商用車というより乗用車のようなデザイン性を感じます。メーターは液晶で、シフト操作はボタン式です。運転席のシートもしっかりとしており、長距離でも疲れない配慮がされていますが、後部座席はともに簡素な造りになります。
内装:N-VAN e:の勝ち
スペック
積載能力
商用バンとして最も重要なのが積載能力です。
共通する項目を比較すると以下のようになります。
2名乗車時 | 荷室長 (mm) |
荷室高 (mm) |
荷室幅 (mm) |
荷室床面 地上高(mm) |
スライドドア 開口幅(mm) |
最大積載量(kg) |
N-VAN e: | 1,495 | 1,370 | 1,390 | 540 | 1,580 | 300 |
ミニキャブ | 1,830 | 1,230 | 1,370 | 675 | 735 | 350 |
※2名乗車時
ミニキャブEVは軽商用バンとしての平均的で十分な積載能力を確保しています。特に荷室長に大きな差があり、荷室の体積を単純計算(荷室幅×荷室高×荷室長)してみると、ミニキャブEVが「3.08㎥」に対しN-VAN e:が「2.85㎥」となり、ミニキャブEVが有利となります。さらに最大積載量にも50kgの差があり、軽バンとしてはミニキャブEVに軍配が上がります。
N-VAN e:で有利な点としては、助手席側の開口幅がピラーレス構造により1,580mmと巨大なことです。
積載能力:ミニキャブEVの勝ち
サイズ、駆動方式
同じ軽商用EVですが、駆動方式には違いがあります。
N-VAN e: | ミニキャブEV | ||||
G | L2 | L4 | FUN | 2シーター/4シーター | |
FF |
FR | ||||
全長(mm) | 3,395 |
3,395 | |||
全幅(mm) | 1,475 |
1,475 | |||
全高(mm) | 1,950 | 1,960 |
1,915 | ||
ホイールベース(mm) | 2,520 |
2,390 | |||
最低地上高(mm) | 165 |
165 | |||
最小回転半径(m) | 4.6 |
4.3 |
全長、全幅は同じですが、全高はN-VAN e:に軍配が上がります。駆動方式についてはN-VAN e:はFF、ミニキャブEVはFRとなります。
最小回転半径ではFRのミニキャブEVが有利です。荷物を積む商用バンであればミニキャブEVのような後輪駆動が動力性能的に有利となります。
サイズ、駆動方式:ミニキャブEVの勝ち
航続距離
EVの肝となる電費を見てみましょう。
モデル | N-VAN e: | ミニキャブEV | |
駆動方式 | FF | FR |
|
バッテリー容量 | 39kW(358V) | 20kW(330V) | |
一充電走行距離 | 245km | 180km | |
交流電力量消費率 ※1 |
WLTC | 127Wh/km | 127Wh/km |
市街地モード | 85Wh/km | 102Wh/km | |
郊外モード | 112Wh/km | 119Wh/km | |
高速道路モード | 147Wh/km | 142Wh/km |
※1)交流電力量消費率とは、電力を利用する電気自動車(EV)の燃費に関する数値で、電費とも呼ばれる。 交流電力量消費率は電気自動車が1km走るのに必要な電力の容量(wh)を表している。 単位の表記はWh/km。 この数値が少なければ少ないほど電気自動車の車両としての燃費性能が良いということが判断できる。
一充電走行距離では、より大きなバッテリーを搭載するN-VAN e:に軍配が上がります。
しかし交流電力量消費率ではミニキャブEVの方が有利となっています。駆動方式やモーターのトルク等の要因があると思われます。
ちなみに三菱自動車が実施した全国のドライバーアンケート調査によると、軽キャブバンが1日に走行する平均距離は77%の方が65km以下だといいます。近場をルーティン的に回るような使い方ならば、どちらでも十分と言えます。
先進安全装備:N-VAN e:の勝ち
価格
ミニキャブEV
グレード | 駆動方式 | メーカー希望小売価格(消費税込) |
CD20.0kWh(2シーター) | FR | \2,431,000 |
CD20.0kWh(4シーター) | FR | \2,486,000 |
N-VAN e:
グレード | 駆動方式 | メーカー希望小売価格(消費税込) |
e:FUN(2/4シーター) | FF | \2,919,400 |
e: L4(2/4シーター) | FF | \2,699,400 |
※G、L2はリースのみのため除外
N-VAN e:について情報が公開された始めた2022年4月頃はガソリン車と同等の100万円台からの設定を予定と明言されていましたが、最終的にミニキャブEV以上に高価となっています。
価格:ミニキャブEVの勝ち
結論
一言で言うと「ミニキャブに勝ち目はある」ということです。
荷室容量で軍配が上がったこと、より安価であることが大きな理由です。
電気自動車というと航続可能距離が一番のポイントと考えるかもしれません。しかし実際のユーザーを考えて見れば、運送会社のラストワンマイルが賄えればそれでよいのです。決められたルートが短距離であれば航続可能距離が200kmだろうが300kmだろうがあまり気にする必要はありません。
また、ガソリンモデルのN-VANを振り返ってみると、運送業者に使用されているケースがあまりありません。そもそも運搬車として不利な形状であることからも、より荷室が広く最大積載量も多いミニキャブEVは有利だと言えます。
EVの成長が鈍化するなかで、顧客が求めているのは圧倒的な利便性です。売って終わりではなく、充電環境等の体制づくりがしっかりできていないとEVのメリットは得られないでしょう。
過熱してきた軽EV市場に今後も注目です。
出典:https://www.mitsubishi-motors.co.jp、https://www.honda.co.jp