私はかねてより車のデザインは「リア」こそ力を入れるべきだと言っています。
なかでもその印象を大きく左右するのはテールライトの配置、形状です。
ボディタイプによって様々なデザインがなされていますが、面白い配置をいくつかご紹介します。
目次
①バンパーメイン型
欧州では「トランク等の可動部にブレーキライト、ウインカーを設置してはならない」という保安基準があります。
つまりテールゲートのような可動部にブレーキライトが付いていると、開いたときに後ろから確認できないため設置することができないのです。
2016 ミニ・クラブマン
そのため2016年式ミニ・クラブマンはバンパー上の細いライトに機能が集約されています。しかしそれだけではあまりにも味気ないため、デザインとしてテールゲート上にライトを配置しています。
開いたまま走行することは基本ない為問題ありませんが、安全性の観点から停車中におけるハザードやテールライトが夜間でも後続車からしっかり視認できる必要性から、こうした規制が存在しています。
②バンパー移動型
上記の例を回避するべく編み出されたのが、テールゲートを“開けた時だけバンパー上のライトに移動”する仕組みです。
2021年式ベントレー・ベンティガ、2020年式アウディ・Q7等の例では、テールゲートを開けるとバンパー上のライトに機能が「移動」するようになっています。
2021 ベントレー・ベンティガ
※出典:https://www.youtube.com
2020 アウディ・Q7
2022年式のミニ・クラブマンも同様の仕組みが採用されています。
これによりテールゲート形状の自由度が増し、よりデザインを優先させることができます。ライトの機能が通常の2倍必要なので当然コストがかかります。2023年現在、日本国内で販売されている日本車では採用例がありません。
③上下分離型
上記の例とは異なり、意図的にボディ部とバンパー部にライトを分けて配置している場合があります。この場合ウインカーがバンパーに配置されていることが多いです。
トヨタ・ハリアー
トヨタ・アイシス
一時期は法規の対応で一部SUVについてダミーのライトが配置されるような場合もありました。既に生産終了となっていますが三菱・パジェロミニのケースでは「斜め後ろから左右のテールライトがみえなければならない」という規制に適応させるため、バンパーにテールライトが移設されました。
三菱・パジェロミニ
この対応は一時的なもので、のちのマイナーチェンジの際にスペアタイヤを中央に配置することで従来のライトを復活させています。同時期に販売されていた大型SUVパジェロでも同様の措置が取られています。
④バンパー集約型
バンパーのみにテールライトを集約した場合もあります。軽バンやトラックでは一般的ですが、乗用車においては最も特殊なデザインといえます。
2012 ホンダ・モビリオスパイク
2014 スズキ・アルト
このデザインを採用するのはリアドアを大きくとった、荷室の広さやアウトドアに重きを置いた四角い車が多いです。しかし衝突した際に最も破損しやすいというデメリットがあります。
テールライトの位置について
車のリアはテールゲートの面積が大半を占めます。その大きなキャンバスを利用して様々なデザインがなされていますが、デザインにおいてテールライトがいかに重要か、スズキ・ジムニーを例にみてみましょう。
ジムニーのテールライトはバンパー集約型です。テールゲートを大きく取る必要があるため最も合理的な位置といえますが、まずはオーソドックスな位置に変えてみました。
一気に普遍的な見た目になりました。先代モデルがこの位置だったこともあり、ジムニーらしさはまだ失われていません。
今度はテールライトが上の方にある場合をみてみましょう。この場合バンパーメイン型、もしくはバンパー分離型になります。デザインの意図としては上部のライトがあくまでこの車を象徴するライトなのですが、一部の機能はバンパー上のライトにあります。
やはり散乱している印象を受けます。
最後にデザイン性と合理性を兼ね合わせた場合をみてみましょう。
上部のライトでキャラクターを象徴しつつ、その他機能もその周辺に集約させることで一体感を持たせています。一気にワンランク上のSUVに見える一方でジムニーが持つ堅牢感はいつの間にか失われてしまいした。
このようにテールライトの配置によってそのキャラクターは大きく変わります。フロントのデザインももちろん重要ですが、車全体を締めくくるリアのデザイン、とりわけテールライトのデザインこそ、しっかりとまとめ上げる必要があるのです。
顔がカッコいい、カワイイというのはあると思います。しかしテールライトの配置を含めてリアのデザインはどうでしょうか?是非改めて見直してみてください。
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