またしても自動車業界における不正のニュースが飛び込んできました。
スズキ、マツダ、ヤマハで、排ガスや燃費を測定する検査において無効なデータを有効としていたことが発覚しました。
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スズキ、マツダ、ヤマハで排ガス燃費不正
国土交通省は9日、スズキとマツダ、ヤマハ発動機の3社から、出荷前の自動車、二輪車の排ガスや燃費を測定する検査で、不適切な事例があったと報告を受けたと発表した。検査条件を逸脱した無効な測定を有効なものとして処理していたという。不適切な事例は3社で計6480台にのぼる。同日午後、各社が記者会見を開いて詳細を説明する。
国交省によると、不適切な検査が見つかったのは、出荷前に車の性能を確認する「完成検査」の一部。排ガスや燃費性能を100台に1台ほどの割合で調べる「抜き取り検査」で、スズキは2012年6月以降に6401台、マツダは14年11月以降に72台、ヤマハ発動機は16年1月以降に7台で不適切な事例があったと国交省に報告した。
スズキの不適切事例は静岡県内の3工場で見つかり、検査対象の車の約5割にのぼった。鈴木俊宏社長は9日午後の記者会見で、「これだけの台数の誤った処理をしていたことは大きな問題。会社としての組織管理体制ができていなかった」と陳謝した。
出展:www.asahi.com
スズキ
2012年6月以降 6,401台
8月9日、新車の燃費や排ガスの検査で不正が発覚したスズキは会見を行い、「検査現場での規律の緩みが原因の一つにあった」と説明しました。
「誠に申し訳ございませんでした」
「これだけの台数で誤った処理をしたのは大きな問題だと厳粛に受け止めている」
スズキ 鈴木俊宏 社長
台数は検査した半数にあたる6401台に上り(49.9%)、鈴木社長は謝罪しました。
スズキのホームページには「「燃費及び排出ガスの抜取検査の不正事案を受けた確認の実施等について」に対する国土交通省への報告について」と題して文書が公開されています。
スズキ株式会社は、2018年7月9日付けの国土交通省からの確認指示を受け、燃費及び排出ガスの抜取検査に関し検査成績書や測定装置に残されているデータについて、関係者へのヒアリングを含め調査をしたところ、規定の走行モードに合わせられず車速が規定の範囲から逸脱し、その逸脱時間が許容範囲を超えた(「トレースエラー」した)ため本来無効とすべき試験結果を、有効なものとして処理した事案があることが判明いたしましたので、別添1及び別添2のとおり、昨日、国土交通省に報告いたしました。
なお、四輪車のその他の検査業務の取扱い及び二輪車については、報告すべき事案はございませんでした。お客様やお取引先様をはじめ皆様に、多大なご迷惑をおかけすることとなり、謹んでお詫び申し上げます。
マツダ
2014年11月以降 72台
8月9日、マツダは東京都内で会見を行いました。出席した菖蒲田清孝専務執行役員は、事態を「重く受け止めている」とし、ステークホルダーに深くお詫びすると述べました。
「意図的ではない。」
「今回の事案をしっかり説明し、販売に影響しないよう取り組む」
マツダ 菖蒲田清孝専務執行役員
対象は2014年11月から18年7月に抜き取り検査を実施した1875台のうち72台(3%)で、小型車「アクセラ」など計10車種に上ります。
マツダのホームページには「完成検査時の燃費および排出ガス測定に関する国土交通省への調査報告について」と題して文書が公開されています。
ヤマハ
2016年1月以降 7台
ヤマハ発動機は8月9日、7月9日付けで国土交通省から確認指示を受けていた「燃費及び排出ガスの抜取検査の不正事案を受けた確認の実施等について」に対する調査結果内容を発表しました。
ヤマハのホームページには「完成検査時の排出ガス抜取検査に関する報告」と題して文書が公開されています。
(一部抜粋)
ヤマハ発動機株式会社は、本年7月9日付けの国土交通省からの報告要請を受け、指定自動車の完成検査工程に属する排出ガスの抜取検査に関して社内調査を行いました。
その結果、「道路運送車両法 保安基準の細目を定める告示 別添44」が定める運転速度の許容される逸脱時間を超えた(トレースエラー)測定結果を除外せず、有効な測定として処理したケースが7件存在していたことが判明しました。トレースエラー以外の測定環境条件の逸脱およびデータ書き換えはありませんでした。
出展:https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2018/0809/notice.html
不正はなぜ起きる?
最近では日産やスバルにおける完成車検査での不正が記憶に新しく、日産と三菱における技能実習生の不正もありました。こうした不正が発覚するのはいいとして、全く悪い噂を聞かないメーカーはどういうことなのでしょうか?本当に誰一人としてミスをしていないということなのか?
スズキの社長が言っているように、「規律の緩み」が原因というのは、まさしく現場の風土がうまく構築されていないことを意味します。部下は上司を見て物事を判断しますから、上司が曖昧なことをしていると部下は「これでいいんだ」と思いこみます。そういった状態が脈々と受け継がれている風土を変えるのは簡単ではありません。これは新しいシステムの導入や責任者の辞任などでは全く解決しません。
どの企業にも、長く勤めるほどその「企業マン」というような、「自分はこの企業の社員だ」と言う自覚を持つようになるかと思いますが、この自覚が薄いままだと、いつまでたってもその企業に対して不安定な状態と言えます。会社にどれだけ人生を捧げられるのか。捧げてもいいと思えるような会社でなければ、社員は会社の思うようには育ってくれないことでしょう。
そのためには「モチベーション」が非常に大切です。例えばとあるメーカーに勤めているとして、「製品の自社開発をやめ、全て外注にする」と言われた時に、これからも一生懸命そこで働く気力があるでしょうか。その製品が会社を代表するようなものだったとしたら、より一層働く気力が失われることでしょう。
こうした不正が起こるのは、社員が会社に対していくらかの不満を持っているのも原因の一つでは無いかと個人的には思います。不正の全く起きない会社は、働いている人が大いに満足しているのかもしれません。
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