インド政府が発表していた、2030年までに国内の自動車を全てEVとする政策を撤回しました。一体何があったのでしょうか。
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政策撤回
【ムンバイ=早川麗】インド政府が2030年の電気自動車(EV)普及に向けた政策を打ち出す方針を撤回した。ガドカリ道路交通相が「EV普及に向けた行動計画を準備しており、政策は必要ない」と述べた。30年に国内の自動車をすべてEVとするとした従来の姿勢を転換し、排ガスや石油輸入の削減に向けてハイブリッド車(HV)などの選択肢に柔軟な姿勢を示した格好だ。
複数の地元紙が報じた。15日にニューデリー市内での充電スタンド開所式に出席したガドカリ氏が発言した。インド政府は17年春、30年までに国内を走る自動車をすべてEVにすると突然打ち出し、最大手マルチ・スズキやトヨタ自動車など日本勢を困惑させる一方、印マヒンドラ・アンド・マヒンドラなど地場勢がEV開発を強化するなど影響が広がっていた。
トヨタ現地法人のシェーカー副会長は「石油の輸入を減らし、大気汚染を改善するという政府目標に沿って行動する」とコメントを発表。「環境保全に貢献するため、HVや燃料電池車など(ガソリン車の)代替車の開発に取り組む」と述べた。
出展:www.nikkei.com
少々設定が厳しすぎたのでしょうか。
2030年までのEV化が発表された際は、スズキ、トヨタともに協力し、モーターの開発などにも乗り出していました。スズキが生産するEVにトヨタが技術的支援を行い、その車両をトヨタへ供給することに加え、インドにおけるEVの普及・定着に資するための活動について総合的に検討を進めていくことになっていました。
ここでインドにおける2017年12月度の新車販売台数ランキングを見てみましょう。
2017年12月度 インドの主要メーカーの新車販売台数 (輸出台数を除く) | ||
1 | マルチ・スズキ | 119,286 |
2 | タタ | 54,627 |
3 | ヒュンダイ | 40,158 |
4 | マヒンドラ | 31,292 |
5 | トヨタ | 10,793 |
6 | フォード | 5,087 |
出典:各社ニュースリリース他
御覧のように、マルチ・スズキの売り上げが圧倒的となっています。スズキ・トヨタともにEVに疎いことと、HVやPHEVといった過程をすっ飛ばしてのEV化は現実的ではないと判断したのか、あるいはスズキには逆らえなかったのか、撤回となりました。
タイはトゥクトゥクを全て電動化に
タイ政府は名物の3輪タクシー「トゥクトゥク」を2022年までにすべて電動に切り替える計画を発表しています。
トゥクトゥクは派手な色合いが特徴のタイで人気の乗り物です。現在、走行しているトゥクトゥクは約2万2000台で、ガソリンなどを燃料としており、排気ガスによる環境への影響が指摘されていました。
タイ政府はトゥクトゥクをこの5年間ですべて電動のものに切り替える計画を発表しました。タイ政府は切り替えに必要な費用について助成金を出し、電動化の普及を図っていく方針です。タイには現在、トゥクトゥクの製造企業が7社あり、電動トゥクトゥクの生産加速に向け、今後国内でバッテリー製造工場の設置も支援する方針を示しています。将来的には電動トゥクトゥクの輸出も後押しするようです。
あのバリバリいうエンジン音がよかったのですが、全て電気になるようです。なんだか風情が台無しですね。実際に電動のトゥクトゥクも既に作られていますが、音一つないため、交通事故が増加しそうです。
EV化について
自分は以前から生き急ぐようなEV化に反対してきましたが、インド政府のこの決断は間違っていないと思います。確かに人口の面でも環境対応車が必要なのはその通りですが、「EV」単体には未来の要素が何一つありません。
モーターで走る車は100年以上前から存在しますし、ミニ四駆と何も変わらないのです。そこに自動車として必要なのは先進装備です。自動ブレーキといった対外安全性はもちろんのこと、オートパイロットといった運転支援システム等、人間が極力何もしなくていい車がEVであるべきだと思います。
インドについていえば、所得の関係からそういった装備を盛りに盛った車は売れないはずです。だからといって「エンジンをモーターにしただけです」では「工作ですか?」です。
EVへの転換で必要無くなる部品は数多く、以前も対象となる部品メーカーについて調べました。
それはインドにおいても同じことですので、インドの部品メーカーを不安にさせるようなことも避けたかったのかもしれません。ですがおおむね先進国ではHVやPHEV、新興国ではそれらに加えエンジン車の需要が引き続き存在するとみています。
どの国についてもですが、政府は人が欲しいと思えるような自動車を開発できるような政策を拡充してほしいですね。