日産自動車が生産・販売する商用ライトバンである「ADバン」。
現行型のデビューは2006年12月と、実に12年以上も販売されていますが、長寿モデルが一般的な商用車業界においてはさほど不思議なことではありません。
しかしこのADバン、知れば知るほど魅力的なのです。
目次
この車について
「ADバン」と書きましたが、名前はここ数年でコロコロ変わっており、現在の正式名称は「NV150 AD」です。
初代は1982年に発売され、現行である4代目の発売は2006年12月。フルモデルチェンジに伴って車種名が「AD」に改められ、上級仕様の派生車種であるADエキスパートが新設されました。
2016年12月にはマイナーチェンジが実施され、ADとADエキスパートを統合して「NV150 AD」に改名されました。この際、歩行者検知にも対応したエマージェンシーブレーキ、LDW(車線逸脱警報)、VDC(ビークスダイナミックコントロール)を全車に標準装備し、安全性能が強化され今日に至ります。
ちなみに「NV」とは「日産(Nissan)のバン(Van)」の略称で、「150」は「車両総重量1,500kgクラス」を意味します。NVには他にもNV100クリッパー、NV200バネット、NV350キャラバンなどがラインナップされています。
2005年にデビューした3代目ウィングロードをベースにしており、NV150ADはまさにウィングロードの廉価版といったデザインが特徴的です。
右がNV150AD この面白さがあなたには分かるか
ステーションワゴンベースであるということ
車高が低く、前部にボンネット、後部にラゲッジスペースを持つ形状を2BOXといいます。
このタイプの最大積載量は、登録車で350 – 500kg程度であり、ハイエースやキャラバンといった1BOXに比べて最大積載量は大きくありません。しかし乗用車ライクであることで乗員の疲労度が比較的少ないこと、車高が低いのでタワーパーキングに入庫できることなどメリットも存在するため、大都市部で社用車として使用されることが多くあります。
実はこのクラスの商用バンは、国内メーカーを見るとトヨタの「プロボックス・サクシード」とNV150ADしか存在していません。他のメーカーはいずれかのOEMを受けているか、そもそもラインナップ上に存在していないのです。
・トヨタ:プロボックス・サクシード
・日産:NV150 AD
・三菱:ランサーカーゴ(NV150ADのOEM)
・マツダ:ファミリアバン(プロボックス・サクシードのOEM)
・スバル:なし
・ホンダ:なし
スズキやダイハツは軽商用車のみ。ホンダの商用車は気がつけばN-VANとアクティトラックのみとなっており、スバルには商用車というカテゴリー自体が存在していません。
商用バンといえばステーションワゴンベースが当たり前だった時代は、とうの昔に終わっていたのです。
2002年に発売された初代プロボックスは、上の画像のカローラ・スプリンターバン後継として、当時の日産ADバンを超えることを目指して開発されました。つまり昔ながらの商用バンはNV150 ADのみということになります。
モデルチェンジはあるのか?
派生元のウィングロードも2018年をもって生産終了となり、現在日産にはベースとなるようなステーションワゴンはラインナップされていません。日産がプロボックスのOEMを受けることは考えられませんが、1,500kgクラスの商用バンを一から開発するとも思えません。
日産 ウィングロード
唯一考えられる現実的な可能性は、ルノーからOEMを受けることです。しかし現在ルノーにもこのような商用車は存在せず、1番近いもので「カングー」ですが、可能性は低いでしょう。
となるといっそモデル廃止かとも思いますが、そうなると国内の商用バンはプロボックス・サクシードの天下統一となり、日産としては高級セダンやタクシーの二の舞となってしまいます。
そもそも売れているのか?という疑問がありますが、日産自動車が公開している「販売・生産・輸出実績データ2018」によると、NV150ADの販売台数は2018年度で15,427台でした。これはスバル レヴォーグの15,685台とほぼ同等の台数であり、結構売れていることが分かります。
先述したように、こういったタイプの商用車が貴重な存在であるため、選ばれる対象となっているようです。
全然売れていないならまだしも、売れているのであればあえて作り変える必要もなく、日本国内市場の重要度がさほど高くないことを考慮すると、当分の間は作り続けられると考えるのが自然だと思います。
しかしいつ無くなってもおかしくない代物なので、気になる方は今のうちに手に入れておいてはいかがでしょうか。