グッドデザイン賞とは、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する、毎年デザインが優れた物事に贈られる賞です。
この度ジャパンモビリティショー2025で東京へ行っていたタイミングでグッドデザイン賞受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2025」が開催されていましたので、足を運んできました。
目次
グッドデザイン賞受賞展とは
今年は11/1(土)~11/5(水)の5日間、東京ミッドタウンで開催されていました。
コンシューマ向けの製品、医療機器やオフィス用品などプロフェッショナル向けの製品、建築、サービス、地域の取り組みなど、デザインを活用したプロダクトやプロジェクトや活動まで幅広く展示されています。

商品、建築、アプリケーション、プロジェクト、サービスなど、多彩なジャンルから選ばれた1,600点以上の2025年度グッドデザイン賞全受賞作が集結。最新の受賞製品や人気のグッドデザイン賞受賞製品を購入できるポップアップショップもオープンします。長年愛され続けるデザインに贈られる「ロングライフデザイン賞」の受賞作も紹介。今年のグッドデザイン賞のテーマである「はじめの一歩から ひろがるデザイン」の数々を、ぜひ体感してください。
2025年度グッドデザイン賞は、4月1日に募集を開始し、5,225件が審査対象となりました。これらに対して、国内外のデザイン関連分野の第一人者で編成された審査委員会によって、二次にわたる厳正な審査を実施した結果、全1,619件の受賞が決定しました。
自動車の受賞をまとめてみました。それぞれ審査員の評価を記載しています。
自動車の受賞対象
グッドデザイン金賞
エイム株式会社・EVM

超小型モビリティの基準を満たした2名乗車が可能な電気自動車である。ガソリンの供給性が悪く、高コストになりがちな離島環境においては、電気自動車の有用性が際立つ。自然災害による停電も頻発するため、バッテリーは、そのまま災害時の備えになる。こうした利点に着目しながら、地域の自然や文化をモチーフに、快活さと楽しさを湛えたデザインを実現した。離島地域の新たな発展をも予感させる提案となっている点を高く評価した。
エイム株式会社(AIM Co.,LTD.)は 愛知県名古屋に本社を置くエンジニアリングサービス事業やEV関連の研究開発・実証実験事業を手がけるベンチャー企業です。この車は島嶼部・観光地に適したデザイン・性能・価格にこだわり開発された2人乗り電気自動車で、ジャパンモビリティショー2025にも出展しておりました。
グッドデザインベスト100
三菱・デリカミニ

前モデルのデビューからわずか二年で登場した新型は、先代のデザイン・コンセプトを踏襲しつつ、スクエアなボディに厚みを加えることで、軽自動車ながら重心の低い安定感を印象づけている。フロントは先代に比べ大きくなった円形ヘッドランプを水平基調のフレームに収め、親しみやすさとタフさを併せ持つ表情を与えている。サイドは力強く立ち上がるAピラーと骨太なDピラーがジオメトリックなシルエットを形成し、キャビンの広がりと安心感を強調している。ブラックアウト処理されたピラーは量感を引き締め、コンパクトでありながら引き締まった印象をもたらす。インテリアは水平基調のパネルと大画面の統合により、軽快さと先進性を兼ね備えた空間を創出している。さらに市民権を得たキャラクター「デリ丸」をUIに組み込み、親しみやすさを巧みに表現している。兄弟車である日産ルークスとの差別化も先代以上に明確であり、その点でも大きく評価できる完成度の高いデザインである。
国内自動車メーカーでは唯一ベスト100に入ったデリカミニ。つぶらな瞳が特徴的なデリ丸デザインをさらに進化させた2代目ですが、デザイン性では他の国産メーカーをしのぎます。
グッドデザイン賞
日産・ルークス

同社の「CUBE」を軽自動車の文脈に落とし込んだような印象を与える新型ROOXは、エクステリア・インテリアともに角を丸めた「がどまる四角」をモチーフに展開し、独自の表情を確立している。フロントはグリルとランプを面で連続させることで、端正さと柔らかさを兼ね備えた顔立ちを構築。ライトやホイール、ドアハンドルに至るまで同じモチーフを反復し、デザイン全体に統一感を与えている。サイドは大きなウインドウエリアと直線的なシルエットで構成され、広さを強調しつつキャビンのボリュームを軽やかに見せる処理が巧みである。インテリアは水平基調のパネルと大画面を融合し、シンプルでありながら広がりと先進感を両立。ルーフ、Bピラー、ダッシュボードを繋ぐ「フロント・フレーム」デザインは外の景色をまるで写真のように切り取る視覚体験を生んでいる。兄弟車である三菱デリカミニとの差別化も明確であり、その完成度は高くその点も非常に高く評価できるデザインである。
ダイハツ・ムーヴ

エクステリアデザインは、車名「ムーヴ」を想起させる躍動感をテーマに据えている。ブラックアウト処理されたウインドウグラフィックがフロントからリアへ抜けることで、キャビンのボリュームを自然に包み込む、安定したスタンスを形成している。フロントはヘッドランプとグリルをシームレスにつなぐ面構成により、凛とした表情とシャープさを両立し、端正な顔立ちを実現している。サイドビューはスライドドアの存在を意識させない滑らかな面と抑揚あるキャラクターラインによって、実用性と洗練性を共存させている。インテリは水平基調の構成と大画面の融合がしアック的な広がりを生み、素材とディテールの確かさが上質感を引き上げている。全体として、確実さと洗練を兼ね備えた完成度の高いデザインである。
スバル・フォレスター

エクステリアは平面基調の先代モデルの魅力を丁寧に引き継ぎつつも、角のとれた重厚なデザインへと”正常進化”を実現。フロントには厚みのあるボンネットと一体感あるフェイスを採用し、”かたまり感”や堂々たる佇まいを強調。広い視界性ももちろん健在。インテリアデザインはセンターコンソールなどは先代のイメージを引き継ぎつつも、異なる表情のレザーやステッチ、色・素材・仕上げ(CMF)の巧みな組み合わせが施され、力強さと上質感が美しく調和。エクステリア、インテリアデザインともに歴代引き継がれるイメージと力強さを巧みに昇華させながら新世代の訪れを感じさせるデザインである。
三菱・デスティネーター

ジオメトリックにまとめられたエクステリアは、表情豊かな面との組み合わせによってドライになりすぎることなく、重厚で安定した存在感を放っている。全体のスタンスも地面をしっかり据え。絶妙な安定感を醸し出している点が秀逸である。フロントはミニマルな面構成が新しい流れを示し、力強いかたまり感を演出している。従来上下に分割されていたヘッドランプを一体化したT字デザインは緻密さを加え、モノとしての完成度を高めている。ピラーやルーフラインをブラックアウト処理することでより実用性と視覚的な広がりを両立し、先進性と落ち着きを兼ね備えた空間を実現している。量感と精度、力強さと洗練を巧みに統合した完成度の高いデザインである。
Geely Galaxy Starship 7 EM-i

エクステリアは、大径タイヤが四隅にしっかりと踏ん張ってプロポーションがよく、張りのあるドア断面、先進的なディテールと相まって、この車両がターゲットとする若い家族が、大きな魅力を感じるものになっている。インテリアは、丁寧に作り込まれ、伝統文化由来のモチーフを美しく昇華しており、配色も洗練されている。全体として、価格帯を越えた優れたデザイン品質を獲得している点を高く評価した。フロント・リアの灯火類や開口部周り、インテリアのディテールなどで、ブランドとして統一感のあるデザインとしている点も評価したい。
Geely Galaxy Starshine 8

堂々とした車格の5ドアセダンであるが、エクステリアは、ハッチバックを活かしたテールエンドへの流麗なシルエットと、ドア断面の抑揚のある連続によって、優雅なたたずまいを獲得している。フロント・リアの灯火類は、伝統文化由来のモチーフを巧みに取り込みながら、見ごたえのあるデザインに昇華しており、ブランドとしての統一感を持たせることにも貢献している。インテリアは、先進的な装備を多数備えながらも、洗練された配色で落ち着いた印象にまとめている。全体として、価格帯を越えた優れたデザイン品質を獲得している点を高く評価した。
NEW IM L6

エクステリアは、車体サイズを活かした有機的で伸びやかなシルエットと、後部を絞り込んだキャビンとのコントラストで生まれる、張り出し感のあるリアフェンダによって、先進的かつスポーティな印象を獲得することに成功している。インテリアは、数々の先進装備を備えながらも、ギークな印象に陥ることなく、洗練されたやわらかさを創出しており、CMFにも多くの工夫が見られる。煩雑になりがちな車内アクセサリーも、マグネット式で統一感のあるデザインのものを、メーカ自らが準備している点も興味深い。先進技術を享受する楽しさにあふれ、現代中国の自動車市場を牽引する迫力を有している点を高く評価した。
ちなみになぜ海外のモデルが受賞しているのかですが、グッドデザイン賞の応募対象は設定された期日までに、ユーザーが購入または利用できる「もの」「こと」で、受賞発表日に公表でき、受賞した場合は受賞展に出展できるものとされており、国籍などは規定されていないようです。2000年からインターネットによる応募受付を開始しており、海外からの応募が可能になっています。
グッドデザイン・ロングライフデザイン賞
ロングライフデザイン賞とは、長年にわたり機能と価値が広く認められ、将来においてもそれらを発揮し続けることが望まれるデザインを表彰します。今日の社会を築くことに貢献してきたデザインという視点から、普遍的な機能性と意匠性を備えたデザインと、社会的影響力が高いデザインを開発し長期にわたって提供を継続する事業者の功績を讃えるとともに、次世代のデザインの指標となる水準点を示すことを賞の目的としています。
三菱・デリカD5

「デリカ」と聞くと、人によってもしかしたら違ったイメージを持つのではないだろうか。私には緑色のボックスが4輪の強固な脚に支えられているデリカが雪道を走っているイメージがあるが、人によってはファミリーがショッピングやキャンプに行く時でもオフロードでも活躍する近年のデリカを思い浮かべるだろう。初期には商用だったモデルが、時代とともに進化を続け人々のライフスタイルに浸透することは容易ではない、しかしデリカシリーズには「人と荷物を安全に運ぶ」という強いアウトカムがあり、それがすべての時代においてのデザインの芯となり、ブレない性能や細かな部位の機能にあらわれている。まさにロングライフデザインであると強く称賛するとともに、今後も時代に合わせた開発を通じて、多くの人に新たな可能性と安全を届け続けてもらいたいと思う。
ジャパンモビリティショーではビッグマイナーチェンジを実施した新型が展示されていましたが、こちらには前のモデルが展示されていました。
グッドデザイン賞は勝手に選定されるわけではなく各自自薦で応募するため、受賞していないからといってデザインが認められていないわけではありません。しかし冒頭にも記載しましたが、今年については約31%(5,225件中1,619件)の受賞率となっており全てが受賞できるものではありません。受賞者は積極的にアピールすることで商品力の向上が期待できます。
今回は自動車に限ってご紹介しましたが、会場には多くの商品が実際に手に取れるかたちで展示されておりました。デザイン性、機能性のある魅力的な商品に触れられるのは非常によい機会なのではないでしょうか。毎年開催されていますので是非足を運んでみてはいかがでしょうか。






























